JR桜木町駅改札すぐの立ち食いそば屋「川村屋」が2023年3月末に閉店した。大勢のファンが詰めかけその味を記憶にとどめようと名残を惜しんだ。
コロナ禍とウクライナ戦争で2020年から立ち食いそば屋が閉店ラッシュとなり、2023年は更に閉店が加速している。その根底にあるのは高齢化・後継者不足。「川村屋」もそんな中の1店舗になってしまったことを大いに嘆いていたわけである。『川村屋がない桜木町なんて……』という思いが強かった。
巷では「跡地にはJR系の立ち食いそば屋ができる?」「コンビニか?」「いや喫茶スタンドじゃないか?」などといった憶測が語られていた。
「再開」という嬉しい衝撃
ところが閉店から4か月を過ぎた8月3日、SNS上に信じられないニュースが掲載された。「私が『川村屋』を継ぐと決めた理由」という記事である。その主人公は3月末まで「川村屋」を経営していた6代目笠原成元さんの次女の加々本愛子さんであった。その熱意のこもった文章には、大切な宝物にハッと気が付いたような初々しさがちりばめられ、9月1日に再開することとその想いが記されていた。
「川村屋」の歴史には謎の点がたくさんある。再開から1か月ほどたった10月初旬、さっそく「川村屋」を訪れ、再開の経緯を含め取材することにした。
「川村屋」を半年ぶりに訪問
桜木町駅は「川村屋」閉店前以来なので半年ぶりである。閉店後の悲しい外観はみていないので、ずっと営業しているような不思議な気分だ。外観は「閉店のお知らせ」が「TV番組の紹介」になっていた以外はほとんど変わらない。英語のメニュー表も同じ。いつもの「川村屋」である。
まずは券売機で「天ぷらそば」(460円)を選びカウンターに並ぶ。値段は40円上がったが十分安い。ベテランスタッフの方だろうか、流れるような所作ですぐに丼が到着した。天気がいいのでどんぶりを持って広場側の出入り口から出て外で食べることにした。
さあ久しぶりの一杯だ。うつわは新調したようで晴れやかなデザインになっている。天ぷらは閉店前・再開後も横浜の天ぷら仕出し老舗「天ぷらいわた」製である。再開後さらに磨きがかかっているのかカラッと揚がっている。
「横浜四大立ち食いそば屋」の1つである
つゆをひとくち。秘伝の節系を使いすべて自家製で出汁をとる。この味だ。沁みる味。桜木町の味である。横浜四大立ち食いそば(他横浜駅前「鈴一」、東神奈川駅「日栄軒」、関内「相州そば」)を代表する味だ。どれも欠けてはならない必須店である。