世界中のファンから評価された映画『名探偵ピカチュウ』
先に「もはや映画に完全に負けてしまっている」と書いたように、2019年に公開された映画『名探偵ピカチュウ』は優れた実写映画化作品であった。
レジェンダリー・ピクチャーズによって制作された本作は、実際に毛が生えているポケモンたちの描写が良くも悪くも驚きを生んだ。しかし実際に公開されてみれば、「ポケモンと人間が同じ世界を生きる」という部分がかなりうまく描けていたのである。
野生のフシギダネが列をなして歩いている場面もあれば、高層ビルが立ち並ぶなか鳥ポケモンがそらをとぶ様子もある。主人公がベロリンガに舐められてしまったり、料理人のパートナーに炎を提供するヒトカゲがいたり、無理にピカチュウに触れば感電してしまったりと、日常にポケモンが隣接しているのだ。
名探偵ピカチュウとリザードンの激しいバトルもあれば、終盤にはアクション映画らしいシーンも用意されている。もちろん、その様子も立派な3Dグラフィックで描写されるわけだ。
ついでに、『名探偵ピカチュウ』がやるべきオチも映画のほうが先にやってしまった。結局『帰ってきた 名探偵ピカチュウ』は原作側なのに、完全に映画の後塵を拝するようなストーリー展開をなぞっていたのだ。これは「映画に負けた」と言っているようなものである。
つまり、映画『名探偵ピカチュウ』には、Nintendo Switchで登場した『帰ってきた 名探偵ピカチュウ』にないものがほとんどすべて揃っているのである。昔のゲーム原作映画はたいていがっかりするもので、必ずといっていいほどビデオゲームの優勢が保たれていた。だが、それが逆転しうる状況にすらなってきたのだ。そして、映画のほうは続編プロジェクトが進行しているのである。
なお、映画『名探偵ピカチュウ』はMetacriticのスコアが100点中53点と芳しくないことは付記しておくべきだろう。ただしユーザースコアは10点中7.4点と一般層からは受け入れられているようだし、『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』のように評論家と一般層の評価が分かれるタイプの映画である。興行収入は全世界で4億3300万ドルと良い結果を残している。