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十分に眠れていると思っていても…睡眠は“何時間が最適”なのか? 研究者が教える「睡眠負債」を減らす方法

『老化は治療できるか』

2023/11/17

source : 文春新書

genre : ライフ, ライフスタイル, 医療, ヘルス

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 柳沢機構長によれば、「休日の前日に夜遅くまで起きていて、翌朝は昼頃まで寝ている」という生活をしていると、睡眠中央時刻が崩れてしまう。土日に夜更かしをして月曜日の朝早くに起きて仕事に行った場合、人の体は「土日にインドあたりまで行って戻ってきたのと同じ時差ボケのような状態」になってしまう。

「つまり、自分にとって必要な睡眠を知り、そのペースを日常的に守ることは、それだけ重要なのです」

睡眠負債を減らす方法

 では、個人にとって必要な睡眠時間はどれくらいなのか。最適とされる7時間だと考えていいのだろうか。

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「先に述べたように、どれだけの睡眠時間が必要かは、遺伝子によって異なります。つまり、人によって違うということです。睡眠負債を減らすためには『自分で実験しながら必要な睡眠量を把握すること』が必要になります」

 日常生活の中で「寝不足」の人が睡眠負債を解消する手法は、次のようなものだ。

(1)まず平日と休日の就寝・起床時間をほぼ同じにする(翌日が休みだからといって、夜更かしをしない)。

(2)就寝時間を普段より30分早める(仕事などで起床時間を動かせない場合)。

(3)その睡眠を5日間から1週間程度続ける。

(4)今までよりも体の調子が良いと感じるか、仕事などのパフォーマンスが向上したのかを確かめる。

(5)次にもう30分就寝を早めてみて、体の調子を見る。

(6)これで十分だという時点が理想的な睡眠時間である。

寝不足のサイン

 この実験には、最大1カ月ほどかかる。ポイントは、自分では十分に睡眠をとれていると思っていても、じつはそれが正しいとは限らないということだ。人はなかなか自分の睡眠に敏感になれないということだろう。

「たとえば、日中に眠気を感じる人の多くは睡眠不足です。本当にその人にとって最適な睡眠時間が守れると、日中眠くならないし、体調も良くなって、表情も変わってくる。これまでいかに、もやっとした世界で生きていたかわかるはずです。そうすると自身の生活が充実してくるのが実感できるでしょう」

老化は治療できるか (文春新書)

河合 香織

文藝春秋

2023年11月17日 発売

十分に眠れていると思っていても…睡眠は“何時間が最適”なのか? 研究者が教える「睡眠負債」を減らす方法

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