藤井戦で勝ち星をあげた加古川青流戦
井出 多少は聞いていましたけど、さすがに現在のようになるとは思っていませんでした。中学生の三段は過去にもいるので、それも踏まえて「早いな」と思ったくらいです。あとは詰将棋がよくできるという話を聞いていました。対しておそらく、自分は棋士の中で一番詰将棋の解図能力がないと思います。
――でも、ニコニコ動画の詰将棋カラオケに出演されていましたよね。
井出 自分はそういうイベントに呼ばれたら喜んで出ちゃいますから。カラオケは好きですが詰将棋はキライです(笑)。まったく解かないわけではありませんが、「○○詰将棋作品集」のような、芸術に特化した問題は解きません。詰将棋に限らず、芸術品に関する興味がほとんどないので。
――いわゆる29連勝フィーバーをどのように見ていましたか。
井出 取材陣の数に圧倒されていましたね。29連勝の合間に都成さん(竜馬七段)と戦いましたが、それを勝つと対藤井戦でした。その時は都成さんに負けましたが、勝ったらどうなっていたのかと思ったくらいです。
――連勝が止まった後ですが、井出さんが連覇を狙う加古川青流戦で藤井さんと対局して、勝ち星をあげています。
井出 取材陣はすごかったですね。対藤井戦のために特別な準備をしたという感じではありません。戦法は加古川で優勝を決めた時と同じく三間飛車を採用しました。まだ藤井将棋の棋譜が少なく、どういう風になるかもわからず、半分は出たところ勝負でした。
将棋が好きなのは「やっていて面白いから」
――加古川青流戦では2年続けて決勝へ進出しましたが、惜しくも連覇はなりませんでした。
井出 その年はそこまでは順調でした。加古川だけでなく、王位戦で渡辺先生(明九段)にも勝ちました。それで満足感を持ってしまってか、そこからはだいぶ負けた気がします。モチベーションをどうやって保つかですが、保てないときは保てないと思うので、自分でもどうするのかわからない。やっぱり、ある程度は将棋を好きという気持ちがないと保てないと思います。
――井出さんはなぜ将棋が好きなのですか。
井出 難しいですね。やっていて面白いからとしか言えません。昔から思っているのは、競った人と戦わないとつまらないということです。ギリギリの終盤を戦うことに醍醐味があるので、こちらと比較して強いにしろ弱いにしろ、そういう将棋にできない人とは何回戦っても面白くないですね。