二刀流、といえば真っ先にMLBの大谷翔平選手の名が浮かぶが、将棋界にも二刀流がいる。「プロ棋士」であると同時に「プロ雀士」でもある鈴木大介九段と井出隼平五段だ。本稿では井出五段から、二刀流を目指した経緯について聞いてみた。
高校の授業中ルールブックを読んで覚えた麻雀
――麻雀についてもお聞きします。まず、井出さんはいつ頃麻雀を覚えたのでしょうか。
井出 高校1年の時ですね。将棋サロン吉祥寺に通うお客さんの話を聞いてなんとなくです。それからルールブックを買って、高校の授業中に読んでいました(笑)。
――井出さんより一回り上の世代では、奨励会時代から麻雀を楽しんでいた棋士が多いイメージがありますが、井出さんは同世代の奨励会員と打つことはありましたか。
井出 奨励会員と打つことはほとんどなかったですね。三段時代の最後の方でちょこっとくらいです。当時は道場のお客さんと打つことが多かったですね。棋士仲間と打つようになったのは最近で、三枚堂君(達也七段)とか、青嶋君(未来六段)とか。それまでは単純ですが、周りに打つ棋士がいませんでした。
――ひと昔前の将棋界の麻雀は、四人いても三麻(三人麻雀)だったと言います。
井出 先輩の世代は三麻が多かったようですが、今はMリーグの影響もあって、四人麻雀のほうが多いですね。まあ人数次第でしょうね。
将棋も麻雀もいい本に出会うと伸びるタイプ
――井出さんご自身の意識として、麻雀が上達したと思ったのはどのような時だったのでしょうか。
井出 ルールはすぐ覚えましたが、しばらく勝てない時期が続きました。そのような時に福地誠さん(麻雀ライター)の本を読むようになってから、劇的に勝てるようになりましたね。私は将棋も麻雀も座学から入るほうなので、いい本に出会うと伸びるタイプだと思います。
――福地さんの本にはどのような理論が書かれていましたか。
井出 リャンシャンテンならリーチが掛かったら無条件で降りましょうなど、合理的な理論ですね。それまでの私は初心者同然だったので、聴牌即リーという考え方も知りませんでした。合理的な考え方を知って麻雀の楽しさに目覚めました。