大牟田は、県境の町である。福岡県の南西のいちばん端っこで西には有明海が広がり、南は熊本県荒尾市だ。古い呼び方をすると、筑後国と肥後国の国境の町、ということになる。
福岡市内最大の繁華街・天神をターミナルとしている西鉄天神大牟田線は、その県境、国境の町が終着駅だ。途中、久留米や柳川を通って特急列車でおよそ1時間。
東京で例えれば、小田急線の新宿駅から快速急行で1時間ほど行くと、秦野駅あたりだ。そう思うとだいぶ遠いような気がしてくるが、通勤圏内としても許容範囲といっていい。いずれにしても西鉄は、福岡の繁華街と福岡県の端っこの町を結んでいる、というわけだ。
そんな大牟田はいったいどんな町なのか。県境の町で西鉄の終着駅、ということは、だいたい田舎町なのだろうと想像していた。途中の久留米あたりの地方都市感を思い起こせば、大牟田は少なくともそれより都心から離れているのだ。
それに、県境はただの境界ではなく、歴史的に政治も経済も文化も隔てられる境界になることが多いから、どうしたって辺境感が出てくるものだ。だから、大牟田という町は田舎町、そうでなくても寂れかけた地方都市だろうと、そう思い込んでいた。
しかし、電車に揺られてやってきた大牟田は、実に大きな町であった。
福岡の繁華街から約1時間…西鉄“ナゾの終着駅”「大牟田」には何がある?
大牟田駅には西鉄のほかにJR鹿児島本線も乗り入れている。西鉄と鹿児島本線は、いわゆる筑前から筑後まで、ほとんど並行して走っているライバル同士だ。福岡市内を中心に、歩いて乗り換えられるほどに近接している区間も多い。
ところが、同じ駅を共有していて乗り換えられるところは大牟田駅だけだ。このあたり、近くを走る鉄道路線同士の微妙な関係が感じられる。
西鉄と鹿児島本線のホームが並んでいる大牟田駅の、メインの出入口はどうやら東口である。少なくとも、駅前広場の規模は鹿児島本線側の東口のほうが大きい。