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公園と隣接する工場。この細長いスペースにはかつて鉄道が走っていた

 宮浦石炭記念公園は工場とフェンスを隔てて隣接している。見下ろすと、操業中の工場エリアとの間には広々とした南北に細長いスペースが広がっている。ここには、かつて三池炭鉱の石炭を運ぶための専用鉄道が通っていた。

 三池炭鉱の専用鉄道は、大牟田からその南側に隣接している熊本県荒尾市までの一帯に何本も通っていた。そのほとんどはとうの昔に廃線になったが、化学工場になった大牟田駅すぐ東側の線路は炭鉱閉山後も残され、三井化学の専用線として使われていたのだ。公園から見下ろす細長いスペースは、ちょうどその専用線の跡である。

 

 その最後まで残った三井化学の専用線も、2020年に廃止されていていまはない。その代役というわけではないのだろうが、ちょうど線路の通っていたところにはパイプラインが敷設されているようだ。パイプラインを追いかけるように歩いて行くと、工場群の合間を抜けて大牟田川という細い川沿いに出る。

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川と交差する国道を駅に向かって歩く。見えてきたのは…

 奥には工場跡地の一部を再開発して生まれたゆめタウンを見ながら大牟田川は西に曲がり、そのまま国道208号の下をくぐる。さらに鹿児島本線と西鉄の線路もくぐり、最後は有明海に注ぐ。途中には、1916年に竣工したという泉橋。白い欄干が青空に映える、鉄筋コンクリート造りの橋だ。

 

 また、国道208号を渡った先には古い造りの廃交番。角にある三井住友銀行の建物もどことなく古めかしい造りをしているから、歴史的に価値があるものなのだろう。泉橋の南側は三井系列の病院があったという。だから、このあたりは炭鉱全盛の時代には町の中心の一角として賑わっていたにちがいない。

 
 

 国道208号を駅の方に向かって南に歩く。幅の大きな通りだが、歩道の上には屋根が掲げられている商店街。線路と国道の間には、バラック建ての建物が集まって飲み屋街を形成している「年金通り」なる一角もある。

 年金通りの名の通り、昼間から年金で暮らしているお年寄りが集まるのだとか。実際、月曜日の真っ昼間に年金通りを歩いたが、スナックの中からはカラオケの歌声が響いてくる。