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資産価値をみる5つの注意点

 ただ複合建物としての資産価値をみる場合には注意しなければならない点がいくつかある。

 1つには、建物内での人の動線問題だ。建物の中には商業店舗で買い物をする人の動線、店に商品などを運び込む搬出入業者の動線、日々の生活を営むマンション住民の動線など複雑になりがちだ。オフィスや公共施設なども同居すると、出入りする人の階層もオフィスワーカー、住民、店舗オーナー、関連業者など様々になり、そのことに伴い動線はさらに複雑化する。様々な人たちが出入りするということは、警備の時間帯や内容も複雑になり、負荷もかかってくる。

 2つには、複数の用途が同居することで共用部などが傷む、汚れるなどの問題が発生する。低層部の店舗で生鮮食料品などを扱うと、搬出入時に廊下が汚れたり、台車が壁や扉にぶつかることで傷ができたりしやすくなる。また飲食店から出る調理などに伴う臭いの問題、クリニックなどで扱う消毒薬の臭い、ペットショップなどから漂ってくるペット独特の獣臭など、通常のマンションではありえない事態が生じることになる。

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 3つには、これらの用途がひとつの建物の低層部から高層部にかけて同居することからエレベーターが多数になる。エレベーターバンクが増えることで、1フロアの形がいびつになり、床を利用するにあたっての有効率(床に対して使える部分の面積割合)が悪くなる。また各用途に必要な設備が混在するため、メンテナンスや更新が複雑になり、建物全体の管理コストが余計にかかってくる。

 4つには、低層部の店舗が景気の悪化や店舗オーナーの高齢化などによって閉店するところが増えると、建物としての見栄えや建物内環境の悪化につながる。テナントがなかなか入らないような事態になれば、最悪の場合、風俗系の店が入居する、深夜遅くまで営業するなどのケースも考えられる。不逞の輩が出入りするようになれば、環境悪化を嫌気して、住民が入れ替わり、住民の質が変わってしまう恐れも考えられる。

 5つには、建物の修繕計画でマンション所有者と商業店舗オーナーの意見があわずに適切な修繕を施せないケースがあることだ。建物を中長期にわたって健全な状態に保つためには、事前計画に基づき着実に実施する必要があるが、互いの利益に齟齬があると、総論賛成各論反対のような事態になりやすいのである。マンション住民の中ですら、大規模修繕では意見が衝突しやすい傾向があるのに、もともと違う目的を持った店舗オーナーや元からの地権者の利害が衝突すると建物全体の価値を維持することが難しくなるのである。