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Kisaraさんの場合――ポリアモリーと育児

 Kisaraさんは、テレビや漫画を禁止されて育った。そのため、「恋愛とはこうである」という社会学習をする機会が薄かったという。一方で読書家でもあった彼女は小学校の時、『源氏物語』を読む。

「この人もいいな、この人もいいな、みたいな本じゃないですか。皆いいな、この人のここが好き、とか。そういうのに共感したんです。でも、六条御息所が、嫉妬のあまり怨霊になるんですよね。それを見て、あー、嫉妬すると怨霊になるんだ、みたいに思って」

 小学校の時から、「女の子を好きになったら駄目だ」とか、「異性を好きになるのが普通だ」といった規範をあまり意識せず、葛藤もなかったという。むしろ、さまざまな価値観に対して、理解に苦しむことの方が多かった。Kisaraさんは私に、レジュメの次のような一文を見せてくれた。

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・誰かと特別に親密になるためには、いま親密な人とその関係を解消しなければならない

 

・誰かと特別に親密になっているときは、他の人と親密になることを避けなければいけない

 

・誰かと交際している人と、性的に親しくなろうとするべきではない

 

・交際相手以外の人と親密な関係を持つことに、罪悪感を抱くべきだ

 

・同じ人を好きな人は、ライバルであり争う相手だ

 

・好きな人が誰か他の人と親しくするのを禁じたくなる

「相手を物として扱う感覚ですね。私はあなたの物とか、俺の物になれとか。所有し合うみたいな感覚も、ちょっと何かよくわからなくて。『私は私の物だけど』『そもそも私、物じゃないしな』とか。ははは。なんかそういう感覚が結構強かった気がします」

高校2年生での初めての交際

 Kisaraさんが初めて人と交際をしたのは、高校2年生の時だった。同じ塾に通っていた男の子だ。その交際などを通じて、「恋愛規範」に違和感を抱くこともしばしばあったという。

「彼氏のことがものすごく好きな男の子の友達がいて、その彼と私も仲がよかったんですね。だからその友達と二人でお茶とかしてたんですよ。そしたら、彼氏がすごく怒って。なんで怒られているのかわからない、みたいな。

 彼から『自分の彼女には、友人の彼と二人で会って欲しくない』みたいなことを言われたけれども、何で特別に親密な関係にあるからといって、他の人と会ったら駄目なのかがよくわからない。一応、その友達と距離を置いてみるんだけど、でも納得いかない。私としたら、付き合うことで私の友達が減ったし、モヤモヤが溜まっていくみたいな感じでしたね」

 その彼とは大学まで交際していたが、恋愛感覚の違いなどもあって別れることになった。

 その後は、誰かと「付き合う」というふうにしないように心がけるようになったという。

「相手に聞かれない限り、他に好きな人がいるかとかは話さない。仲良くする、頻繁に会う、セックスをする。そうすると、自分だけが好きなんだ、って思ってくれる。ある意味酷いことだと思うんですけど。私も実際好きだけれど、付き合ってるとか付き合ってないとか、そういう話はしない。そんなことをしばらくしてましたね。仲良くなる過程で、相手が自分を独占したい感じが出てきたりしたら、シャッて逃げてました。ひゃーっ! 出たな、独占欲! って感じで」