日中は45分間隔、朝の7時台には10分間隔という「極端なダイヤ」
さらに東へ進んで大正区役所や千鳥公園などを見てしばらく行くと木津川のほとり。木津川には、なんと4つもの渡船場が設けられている。
いちばん北(つまり上流側)にあるのが落合上渡船場で、河口に向けて落合下渡船場・千本松渡船場・船町渡船場・木津川渡船場と続く。木津川渡船場はちょっと離れているが、それ以外は歩いて行き来できる範囲にまとまっている。それだけの需要があるということだ。
実際、落合上・落合下・千本松は、どれも平日の昼間というのにそこそこお客が乗っている。運航間隔も15分間隔と、かなりの充実ぶりだ。木津川沿いには工場が建ち並び、さらに川岸から少し奥に入れば住宅地。木津川東岸では、すぐ東側に南海汐見橋線(高野線)も通っている。
この汐見橋線は“大都会の中のローカル線”として知られ、昼間は30分間隔。つまり、木津川の渡し舟のほうが充実している、ということになる。
木津川沿いを渡し舟で行ったり来たりしながら下ってゆき、木津川渡船場を目指す。木津川渡船場のすぐ脇には新木津川大橋という大きな橋が架かっている。高速道路ではないので歩いて渡ることもできるが、なにせとても高い橋(だいたい50mくらい)だから、えっちらおっちら階段を登らねばならない。
そのため、やはりここでも渡船が役に立つ。船で渡った先は鉄鋼工場や造船所などがある純粋な工業地帯。つまり、そこで働く人たちの通勤需要がほとんどの渡し舟だ。日中は45分間隔だが、朝の7時台には10分間隔という極端なダイヤが、そんな実態を教えてくれる。
ちなみに、木津川の渡しにはかつてカーフェリーが就航していた。工業地帯への通勤ということで、クルマを使う人も多かったのだろう。ただ、1973年に千本松大橋(千本松渡船場のすぐ脇)が架かるとカーフェリーは役割を終えている。