地方から東京に出てきた人のほとんどは、まず決まって地下鉄ネットワークの複雑さにおったまげるらしい。まあ、確かに都心の真ん中を13路線が組んずほぐれつ走っていて、全容を把握するのは困難を極める。東京に数十年住んでいたって、地下鉄の乗り換えをすべてそらんじることのできる人などいるのだろうかと思うくらいだ。
ただ、複雑怪奇なのは東京の地下鉄ばかりではない。日本第二の都市・大阪だって、8本もの地下鉄が市街地の地下を走っている。そんな中でもヨソ者にとってもなじみ深いのは御堂筋線だろう。
新大阪駅で新幹線を降りて、まずだいたいの人が乗り換えるのは御堂筋線だ。これに乗れば、梅田もなんばも天王寺も、どこにだって行くことができる。裏を返せば、大阪で暮らしたり働いたりしていない限り、御堂筋線以外の地下鉄にはどうにも馴染みがない、ということになる。
つまり、あまりに御堂筋線が便利だから、その反面ほかの地下鉄路線がよくわからない。そんなことを大阪の知り合いに話したら、「東京と違って大阪は碁盤の目だから簡単ですよ。四つ橋線は四つ橋筋を通っているし、谷町線は谷町筋。ほら、わかりやすいでしょう」などと、ますますわけのわからないことを言われてしまった。どこの都市だろうが、目に見えない地下を右に左にと走り回っている地下鉄は、相当慣れない限りは実にややこしいものなのだ。
谷町線“ナゾの終着駅”「八尾南」には何がある?
と、そんな大阪の地下鉄の中で、御堂筋線と並んで重要な位置を占めているのが、谷町線だ。お客の数は、天下の御堂筋線に次いで多いという。梅田(駅としては東梅田)、天王寺という二大ターミナルを結びつつ、オフィスや官公庁、学校などが多く建ち並ぶエリアを中心に走っている。
だから、観光などで大阪を訪れる人にはあまり馴染みがないかもしれない。いっぽうで、大阪に根ざして暮らしていれば、避けては通れない地下鉄のひとつといっていい。
そんな谷町線の終点が、八尾南駅だ。そもそも谷町線はスタート地点も大日駅といい、これもまた謎めいているのだが、今回ははるばる南の端、八尾南駅を訪れてみたい。