車両基地に取り囲まれたホームに降り立ち、駅舎を見上げると…
谷町線は地下鉄なので、もちろんほとんど地下を走る。ところが、八尾南駅だけは地上に駅がある。トンネルから抜けて地上に顔を出してすぐにホームに滑り込む。駅の周囲には車両基地が広がっていて、実態としては車両基地の中にホームがあって駅がある、といった雰囲気だ。
乗り降りするお客も少なくホームもコンコースも閑散としている。その周りを車両基地が取り囲んでいるのだから、どことなく殺伐とした空気が流れているのだ。
それでも、駅舎はずいぶんと立派だ。商業施設の類いが入っているような駅ビルではないから、たぶん車両基地などに関わる業務スペースとして使われているのだろう。
出入口は駅の北と南にあるようだが、北口側は車両基地を跨ぐ薄暗い通路が続く。それに対して南口は改札にも近く、駅前広場も見える。なので、まずは南口のほうに降りてみる。
八尾南駅の南口、大きなロータリーがあって、周囲にはミキハウスの本社をはじめとするオフィスビル。さらにその奥には、印刷工業団地や菓子工業団地。つまり、八尾南駅の駅前には工業団地が広がっているのだ。だから、駅のすぐ近くを通る道にはトラックも盛んに行き交っている。
地下鉄の終点、それも郊外の駅だから、ベッドタウンだとばかり思っていた。しかし、実際には工業地帯のターミナル。朝のラッシュアワーには、きっとたくさんの人がこの駅めがけてやってきてコンコースもたいそう混雑するのだろう。
駅の周りにもたくさんのトラックが。どうしてこんなに工場が多い?
駅の周りを少し歩いても、小さな工場がひしめく一帯が延々と続く。その中にはマンションや団地のような建物も目立つが、基本的には中小の町工場が集まる工業地帯が、八尾南という駅が抱えている町の特徴といっていい。
駅前から離れても大通り沿いを中心にたくさんのトラックが行ったり来たり。ありとあらゆるジャンルの小さな工場が盛んに動いているのが、町を歩いていても伝わってくる。
大阪は、日本屈指の工業都市だ。大阪湾沿いには大工場がずらりと並び、かつてはそれらの工場からあがる噴煙から「煙の都」などと呼ばれたこともある。朝ドラの舞台にもなった東大阪が町工場の集まる都市というのはよく知られたお話。そして、東大阪市の南側にある八尾市、その南端もまた、町工場の集まるエリアになっているのだ。