それもすべて大阪市が運営する“公営渡船”で、運賃は無料。つまり、お金を払わずタダで船に乗って川を渡ることができるのだ。こんなにありがたいことって、ありますかね……。
というわけで、大阪の公営渡船、8か所すべて乗ってきた。タダだから、というよりは、泣く子も黙る大都会・大阪のど真ん中に、ちょっと前時代的な風情の漂う渡し舟があるというのだから、それはもう気になるに決まっているではないか。
運航は30分間隔。対岸からゆっくり船がやってきた
最初にやってきたのは、桜島である。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのすぐお隣の、JRゆめ咲線の終点だ。この駅からほんの10分ばかり歩けば、すぐに渡船ののりばにつく。結んでいるのは安治川の対岸、天保山だ。なので、「天保山渡船場」という。
ちょうど真上には阪神高速の天保山大橋が架かっているが、こちらはもちろん人が歩いて渡れる橋ではない。それに、だいぶ高いところを通っているから、「歩いていいよ」と言われたってちょっと御免被りたいところだ。
そうした事情もあって、渡し舟が現役なのだろう。のりばで待っているのは自転車を押した地元のおじさんやおばさん。そして、外国人観光客の姿もあった。USJはもちろんのこと、対岸の天保山のすぐ近くには海遊館もある。USJと海遊館を同じ日にまとめて楽しむならば、この渡し舟を使うのがいちばん便利なのだ。
天保山の渡し舟は、30分間隔で運航されている。対岸からゆっくりゆっくり船が近づいてきて、こちらに着いたらすぐにお客が入れ替わる。みんな乗り込んだらすぐに出港して、5分足らずで対岸へ。クルマやバイクはダメだけど自転車は大丈夫なので、通勤や通学、お買いもので使う人も多いようだ。
天保山渡船場は1905年に開設されたのがはじまり。昭和の初めに天保山~桜島のルートが固まった。USJができる前の桜島は大工業地帯で、戦時中には軍需工場もあった。工場で働く人たちにとって、渡し舟はいま以上に大切な通勤の足だったのだろう。