今年6月にはユニセフ親善大使として岸田総理を表敬訪問、7月には日本芸術院会員として天皇皇后両陛下と懇談。そして11月19日の『赤旗』日曜版には、ウクライナやガザについて、日本の芸能人としては異例なほど踏み込み、平和への願いを語る彼女のインタビューがある。総理、皇室から赤旗まで。教室の窓ぎわで静かに沈黙することができなかったトットちゃんは、90歳の今も沈黙を拒否し、場面を問わず平和についての発言を続けている。
窓ぎわのアウトサイダーだから気がつくこと
「『窓ぎわ』という題名にしたのは、これを書き始めた頃、『窓ぎわ族』という言葉が、流行しました。なんとなく疎外されている、もはや第一線でない、という響きが、そこにありました」と、1981年の初版の『窓ぎわのトットちゃん』のあとがきで黒柳徹子は書いている。
企業から生産性がないとみなされ白眼視される中高年男性の呼び名に、彼女は障害をもつ子どもや差別に苦しむ人々などすべての弱者の名を重ねたのだ。窓ぎわのアウトサイダーであるがゆえに、窓から見える外部の美しい景色に気がつくことのできるトットちゃん。
だから、映画館でこの映画を見ている時にもしも声をあげてしまう子どもがいたとしても、それもまたこの映画の一部として受け入れてほしい。映画のスクリーンという窓の前に座るすべての観客は窓ぎわのアウトサイダーであり、そして映画の銀幕はいつも、その窓から新しく美しい景色を見せてくれるはずだから。
『窓ぎわのトットちゃん』
INTRODUCTION
全世界累計2500万部超、20以上の言語で翻訳された黒柳徹子の自伝的小説『窓ぎわのトットちゃん』が、発売後42年を経てついに映画化。八鍬新之介が監督を務め、『ドラえもん』などを手掛けてきたシンエイ動画が制作。役所広司、小栗旬、杏ら豪華俳優陣も声優として参加している。
STORY
落ち着きがないことを理由に、小学校を退学となったトットちゃんは、トモエ学園に通うことに。おおらかに受け入れてくれた小林校長先生のもと、泰明ちゃんはじめ友人たちとの様々な体験を通じて日々成長していく。しかし戦争の影はトモエ学園やトットちゃんの日常にも迫っていた…。
監督・脚本:八鍬新之介/共同脚本:鈴木洋介/出演:大野りりあな、小栗旬、杏、滝沢カレン、役所広司他/キャラクターデザイン・総作画監督:金子志津枝/制作:シンエイ動画/原作:「窓ぎわのトットちゃん」(黒柳徹子著/講談社刊)/全国東宝系にて公開中