平塚八幡宮のすぐ北側には平塚市役所があり、さらに目線を広げてみると国道1号の北側は工業地帯になっている。平塚八幡宮の北西には横浜ゴム、東に目線を移して相模川沿いには日産車体を中心とした工業団地。平塚は、工業都市としての側面も持っている。
繁華街を歩いていると「お皿を数える声」の気配が…?
駅から離れてばかりではつまらないので、平塚駅の近くに戻ろう。
平塚駅周辺で(というよりは平塚市全体でも)いちばんの繁華街は、駅北側の旧東海道沿いを中心とする一角だ。旧東海道(湘南スターモールと呼ばれる)に加え、線路と旧東海道の間に通る紅谷パールロードがともに商店街になっていて、人通りもこのあたりに集中している。平塚の賑わいの中心地、といったところだろうか。
そんな繁華街の中を西に向かって歩いてゆくと、ピンサロやキャバクラが集まった「しんしく横丁」という小路に出た。いわば平塚の歓楽街。旧街道筋にしてかつての宿場町だった平塚には、きっと遊郭に類するものがあったはず。このピンサロ街は、そうした遊郭街の名残なのだろうか。
しんしく横丁から線路沿いを目指して南に歩いて行くと、小さな公園があった。その中には、「お菊塚」と書かれた石碑。脇にある説明書きを読んでみると、どうやらかの番町皿屋敷のお菊さんのお墓なのだとか。
いちおう番町皿屋敷について簡単に説明しておくと、江戸時代の半ば頃の火付盗賊改・青山氏の屋敷で下働きをしていたお菊さんが大事にしていたお皿を1枚割ってしまう。叱責を受けたお菊さんは古井戸に身を投げ、それ以後夜になると「1枚、2枚、3枚……」とお皿を数えるお菊さんの声が聞こえてきました……という怪談である。
そのお菊さんは平塚の生まれで、だから平塚にお墓がある、という按配だ。番長皿屋敷はさすがに作り話だろうが、もしかするとそのモデルになったお菊さんは実在していたのかもしれない。
と、真冬なのにちょっとホラーじみた話をしてしまったが、平塚は決してホラーな町ではない。お菊塚の公園のすぐ脇にはラブホテルがあったりするわけで、いろいろなものが凝縮されている現代都市。お菊塚の公園のすぐ南側には、ラスカなどの商業施設とは繋がっていない平塚駅西口が設けられている。