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妻が余命宣告され、保護犬を飼うことにした…野犬だった「福」が取り戻した“家族の笑顔”

『妻が余命宣告されたとき、僕は保護犬を飼うことにした』(小林孝延 著)――ベストセラー解剖

2024/01/15
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『妻が余命宣告されたとき、僕は保護犬を飼うことにした』(小林孝延 著)風鳴舎

 著者は料理と暮らしをテーマにした雑誌の編集長を歴任し、プロデュースした書籍もヒット中の編集者。妻ががん闘病の末、余命宣告を受けたとき、子どもたちとの会話もなくなるなど家族はどん底に。そんな中、友人に保護犬を飼うことを勧められ、出会ったのが野犬だった子犬。福がやってくるように、との願いを込めて名付けた「福」との暮らしを通じ、家族に笑顔が戻る様子を描いた本書は発売1カ月で5万部を突破した。

「奥様の一周忌が終わるか終わらないかの2019年に依頼。最初の原稿は重い印象でしたが、3年半という月日が著者の心境に変化をもたらしたのでしょう。最終的には、淡々とした筆致でときにユーモアをまじえながら描かれ、心温まる読後感になっています」(担当編集者の青田恵さん)

 額にしわを寄せた困り顔の福は、寝ている妻に寄り添うやさしさもありながら、大変な臆病者。車や人を避け、夜明け前に散歩に連れて行く著者の努力の甲斐あり、徐々に警戒を解いていく。留守番中にキッチンの床材を食い破ったり、玄関の内鍵をかけたりも。そんな福の姿は、未来への不安を忘れさせ、今を生きる大切さを教えてくれたという。アマゾン総合ランキングの他、エッセイ、ペット、緩和医療などのジャンルでも1位に。映像化の話もあるなど、今後ますます幅広い展開を見せそうだ。

2023年10月発売。初版5000部。現在6刷5万3000部(電子含む)
妻が余命宣告され、保護犬を飼うことにした…野犬だった「福」が取り戻した“家族の笑顔”

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