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 これを本邦に置き換えると、「日本通」を自認するドイツ人あたりが、「9条改悪ガンコに反対!」とか「自主憲法制定と教育勅語復活!」みたいな言葉をハンドルネームに入れ、社民党や日本のこころ(現在は解散)の旗をアイコンにしてSNSで発言するようなイメージだ。これは日本通ではなく、ただのヘンな外国人だろう。

 もう少し穏健な立場でも、仮に日本の衆院選のたびに外国からやってきて開票当夜に日本人を抜きに集まり、立憲民主党や日本維新の会の祝勝宴会を開く外国人集団がいたとすれば、やはり相当奇妙な人たちだ。

なぜ日本人は民進党に肩入れするのか

 台湾台南市の国立成功大学博士課程在籍中の日本語教師で、台湾選挙ウォッチャーでもある黒羽夏彦氏が、1月22日付けでX(旧Twitter)にこんなポストを投稿している。

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 個人的な感覚では、民進党に対する「台湾好き日本人」の熱中は政治的に「右」の人ほど強いが、現在はその見解がノンポリ層まで薄く広がっている印象だ(リベラルや左派の場合、そもそも「台湾好き」がすくなく、せいぜい社会運動の交流で台湾のNPOと接して彼らの人権意識の高さに驚く段階にとどまっている)。ただ、その点以外は私も黒羽氏のポストにほとんど同意である。

 ここで気になるのは、「民進党愛」がなぜ広がったかだろう。おそらく大部分の人は民進党の個々の政策を読んでいないはずなのに、なぜか「台湾好き日本人」の多くは、海外の一政党にすぎない民進党をべったりと応援しがちなのだ。

これは日本の「政治問題」である

 この疑問の考察は、なかば日本の「政治問題」に属する。なので書き手の思想信条や背景事情を勝手に想像されてしまいがちだ。ゆえにあえて、私自身の立場や経歴を先に示しておく。

 私の最初の中国語の先生は台湾出身の本省人で、語学学習を兼ねて台南市のおうち(民進党を熱烈に支持する「深緑家庭」だ)に1ヵ月くらい泊まらせてもらった経験もある。当時は陳水扁が政権奪取(2000年)を果たした直後であり、先生からは司馬遼太郎や小林よしのりの「台湾本」(後述)をオススメされ、それなりに熱心に読んだ。

2015年8月、台南在住の、先生の親戚のところで撮影。こういうバリバリの台独派も昔から付き合いはある ©安田峰俊

 一方、その後の20年あまりを通じて、私は「深緑」の人たちやヒマワリ学運(2014年に起きた学生運動)の参加者はもちろん、外省人や国民党本土派の本省人、中華民国の大陸側領土である金門島民、サンフランシスコの民国派華僑、中国大陸でビジネスをおこなう台湾人(台商)、第三極政党の支持者……と、台湾社会のいろいろな人に会ったり取材したりした。