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「予想外でした。休日の利用者は見込みの2~3倍くらい」75年ぶりの新規路面電車はなぜ成功したのか?【宇都宮ライトライン運営会社ロングインタビュー】

「予想外でした。休日の利用者は見込みの2~3倍くらい」75年ぶりの新規路面電車はなぜ成功したのか?【宇都宮ライトライン運営会社ロングインタビュー】

宇都宮ライトレールの担当者に聞く

2024/02/04
note

「観光目的で乗るときの見どころはここかなと」

杉山 LRTの経路なんですが、道路を拡幅されたんでしょうか。3車線のところを1車線潰したような感じに見えます。用地拡張をせず都心部の車線を潰すって思い切ったなあと。

宮崎 駅東公園前停留場から峰停留場の間に国道4号線を越えますが、そこまでは拡幅していません。車線を少し潰して導入しています。国道4号線を越えた先から用地買収が発生していまして、なるべく軌道をまっすぐにする形にしました。宇都宮大学陽東キャンパスから先、平石のところで南側にくにゃって折れてますよね。

杉山 道路を逸れて本社と車両基地の予定地に寄るという意図ですか。

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宮崎 いえ、そのまま道路を進むと新4号国道(新4号バイパス)と交差するんです。かなり交通量が多くて、道路管理者さんなどとお話をする中で、アンダーパスもオーバーパスも難しいと。そこで南側をくぐっていこうと。

杉山 国道をくぐって先へ行くと急勾配がありますよね。ここだけではなく、宇都宮駅東口を出てすぐ、国道4号のオーバーパスも。いきなり勾配が現れて、こんな上り坂があるんだと驚きました。

宮崎 急勾配は芳賀工業団地管理センター前から芳賀・高根沢工業団地の60パーミルっていうのがあります。

杉山 すごい。60パーミルは、1000メートル進むと60メートル高い位置になるレベル。北陸新幹線開業前の信越本線横川~軽井沢間が66.7パーミルで、当時は電車特急も補助機関車を2両連結したほどの急勾配です。それを3両編成の電車がグイグイ上るんですね。

60パーミル勾配。いったん下ってから上る

宮崎 「観光目的で乗るときの見どころ」はここかなと。

杉山 異議なしです。ほんとうに驚きました。

宮崎 それから鬼怒川の橋梁でしょうか。全長643メートルで、この規模で路面電車専用の橋は珍しいです。

杉山 東京スカイツリー(高さ634m)を横倒ししたよりも長い。建築として眺めても美しいし、車窓も広々として気持ちいいです。ここで車窓から初日の出を見るイベントをされたそうで、良いアイデアだなあと。ライトラインは「必要性」とか「営業成績」とか、堅い話が多いような気がしますが、ちゃんと遊び心もある会社なんですね。

宮崎 行政の政策でも「LRTを活用して」みたいな案件がかなり多いです。私自身も「せっかく作ったので、乗っていただきたい」っていう気持ちと、市民の皆さんの日常使いに定着させたいなという気持ちがあります。

杉山 初日の出イベントのほかにイベントはありますか。

宮崎 夏の時期だと、道場宿で花火大会がありまして。

杉山 道場宿は鬼怒川沿いですね。LRTと花火を組み合わせて撮れそうですね。

宮崎 道路も混みますし、LRTを利用してご覧いただきたいです。

鬼怒川を渡って日の出方向を見る
反対側の車窓。花火はこちらに見えるはず

急ブレーキを避ける運転、タイミングを見極める運転士のテクニック

杉山 運転士さんのテクニックがすごい。路面電車用の黄色い矢印信号が出ていても、同じ方向の歩行者用信号が青の点滅になると減速して、赤になると停まりますね。そのとき黄色矢印は消えている。急ブレーキを避ける運転、タイミングの見極めがうまい。

宮崎 運転士それぞれが安全な走行のために工夫していると思います。ここで停まると次に行けないとか、ここで停まれば次の信号からは信号停車がなくて済むとか。

杉山 道路信号にも工夫があると思いました。

宮崎 他の都市の事業者さんって、路面電車用の信号とクルマ用の信号が完全に分離されてないと思うんですよ。

杉山 そう言われてみると、キホンは路面電車も道路信号に従う感じですね。