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宮崎 新規建設に当たって、道路関係機関との調整はしっかりやりました。道路併用区間の交差点は、路面電車の進行と自動車の進行が交差するような信号現示はありません。路面電車の黄色い直進表示と自動車の右折表示は必ず別々に出ます。だから信号現示を守っていただければ右直事故はない。この部分は視察に来られた事業者さんから羨ましいというお言葉をいただいております。

電車の直進と自動車の右折が分けられている
電車連動信号機(右)

杉山 郊外区間に行くと「電車連動信号機」もありますね。あれは電車が近づくと電車を通す現示に切り替わる。行政と一体になって、他の都市の前例にとらわれずに検討してきた。そして地味ですが新しい技術が多い。開業当初からIC対応で、しかもすべての扉から乗降可能。私が注目したのは、現金乗車の時に使う「二次元コード整理券」でした。QRコードに似ているけど、ちょっと違います。

宮崎 あれはバス会社でも導入されていますよ。新しい技術ではないんです。

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杉山 そうなんですね。私が知っている整理券は、このサイズですけど、「1」とか「2」とか書いてあるだけで。いつのまにか進化していたんですね。運賃箱にこの整理券を入れると、バーコードを読み取って運賃が表示される。運賃を入れて金額が一致すると音が鳴ります。あれが気持ちいい。

宮崎 これは関東バスさんでも導入されていますし、宇都宮市民でしたら違和感ないかと思います。

杉山 なるほど。新しい車両に収受システムを導入したら最新式になったわけですね。車内ではなく停留場に整理券発行機があって、あらかじめ取っておくと乗降がスムーズになる。良い仕組みですよね。

宮崎 むしろICカード方式の方が慣れないかもしれないと思いました。バスの方で2021年からICカードが導入されたばかりなので。

杉山 でも、拝見したところ、ほとんどの皆さんは慣れているようでした。

すべての扉に交通系ICカードリーダーを装備。交通系ICカード全国相互利用サービスに対応する

宇都宮市内で発電した電気100%で走っている?

杉山 車両が揃っているとカッコいいですね。他の都市だと新旧車両が混じって統一感がない。いや鉄道ファンはレトロ車両も好きなんですけれども。

車体ラッピング広告第1号は「宇都宮ブレックス」


宮崎 新規路線ですから、車両と停留場などのデザインも統一しています。

杉山 停留場のガラスの壁、きれいですね。見通しをよくしたいけど、ポスターの広告は取りたい。ジレンマがありそうです。

宮崎 それも、ポスターを貼る位置を決めてデザインしています。個性化壁と呼んでいまして、地域の特色を紹介するポスターも貼っています。このあたりは富山ライトレールを視察して参考にさせていただきました。停留場周辺のまちづくりや、フィーダーバス計画も参考にしました。宇都宮市のバス会社などで導入したICカード「totra」の利用者は、60分以内にバスを乗り継ぐと100円割引になるとか。

杉山 乗りやすい環境を作っているんですね。

近代的ながら風景に溶け込む駅舎デザイン
超低床車両とプラットホームを同じ高さに。車椅子やベビーカーもラクラク

宮崎 それから、電車を見るだけでは判りにくいですが、実は、再生エネルギーも含めた宇都宮市内で発電した電気で走っています。

杉山 100パーセントですか。それはすごい。

宮崎 宇都宮市の南側に「クリーンパーク茂原」というごみ焼却施設があって、焼却熱やバイオマスを使った電気を作っています。ライトラインはその電気を使っています。

杉山 いろいろと新しいことが多くて、感心します。宇都宮市は餃子の街として有名ですが、餃子を食べて、ライトラインというアトラクションも楽しもうかな、という気持ちになりそう。

宮崎 そうなんです。反対の声なんて一瞬で吹き飛ぶくらいのインパクトです。

杉山 反対と言えば、検討段階から建設着手まで反対運動も報じられましたね。たしか市長選が2回あって、2回とも推進派の現職が当選して決着が付きました。

宮崎 反対される方の論点は主に3つで、(巨額を投じても)「見込み通りの利用者数にならない」「赤字になって税金が上がる」「渋滞は解決しない」なんですね。2016(平成28)年の市長選は反対候補がLRT反対のワンイシューで公約を掲げました。結果は6000票差で現職が勝ったんです。