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『白日青春-生きてこそ-』の香港スター、アンソニー・ウォンが語る「いまの香港映画」「もし日本で撮るなら」「北野武作品への思い」

source : 週刊文春CINEMA オンライン オリジナル

genre : エンタメ, 映画

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いまの香港映画は2種類ある

リム 最近の香港映画をどう思いますか? 特に最近沢山の新人監督が出てきて、今までと違った香港映画が作られて、「香港の新しい波」と呼ばれていることに関しては。

ウォン いまは明らかに2種類の香港映画が存在している。ひとつは昔のようなジャンル映画の大作だ。有名なスターが出演し、大きな予算をかけられた、昔ながらの香港映画だ。もう一つはアンディ・ラウ、アーロン・クォックあるいはトニー・レオンのようなスターが絶対に出ない、今の香港社会を反映するような低予算映画だ。確かにそれは新しい香港映画と言えるかもしれないね。僕はそういう新しい香港映画に誘われて、参加することができたのは、とても光栄なことだと思っている。最近、もう一つ「新しい波の映画」に出演した。神父の役でね。これも楽しかった。

パキスタンの難民少年のために奔走する主人公 PETRA Films Pte Ltd © 2022

リム ウォンさんは日本が大好きだそうですが、日本のなにが好きですか?

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ウォン 歴史的に日本は200年以上鎖国されていたので、ほかの国と違う特別な美学が生まれたと思う。その後、西洋の文化を取り入れることになったが、それも東洋と西洋の良いところをうまくバランスよく融合させた。例えば(また『白日青春』のポスターを指しながら)、香港ではこの映画のメインビジュアルを一度もかっこいいと思えなかった。でもこの日本版のポスターを見て、これこそアート系映画のビジュアルだと思った。このポスターをとても気に入った。このデザイン、レイアウト、そして配色も本当にかっこいいと思う。

絶賛する日本版ポスターとともに ©三宅史郎/文藝春秋

「香港のベテラン俳優がAV男優になるために来日するコメディ」はどうだ?

リム 最近の日本映画をどう思いますか?

ウォン 日本映画にかぎらず、実は最近あまり映画を見ていないんだ。本ばかりを読んでいる。フランス人の舞台監督が残した演劇の教科書を整理して、本も出そうとしている。だから最近の日本映画に関してはなにも言えないが、昔から北野武の映画が大好きだ。彼は本当の天才だと思う。彼の映画の特徴の一つは静かな画面が続いているにもかかわらず、とてもダイナミックなテンションを感じさせていること。『座頭市』は5回も見た。引きの絵が素晴らしい。余韻がいい。音楽センスも最高。彼の映画に出るのは夢だね。