東京都心の北の端、赤羽駅から少し歩くと、新河岸川と荒川をまとめて跨ぐ国道122号の新荒川大橋に出る。この橋の上や土手の上から川の向こうを見れば、背の高いマンションがぎゅっとひしめく一角が見える。多摩川の土手からも似たような景色が見えるが、そこで見るマンション群は神奈川県川崎市の武蔵小杉の町だ。で、荒川の土手から見えるマンション群はというと……埼玉県川口市である。

 武蔵小杉といい、川口といい、東京は南北の境界の川を挟んだ向こうにはタワマン群がある。そういう意味で、武蔵小杉は南の川口、川口は北の武蔵小杉、といったところか(などというと、どちらの方面からも怒られてしまいそうですが)。そして今回の訪問先は、川口だ。

“埼玉第2の市のターミナル”「川口」には何がある?

“埼玉第2の市のターミナル”「川口」には何がある?

 埼玉県川口市は約60万の人口を抱える埼玉県で第2の都市。政令指定都市以外では、全国的にも船橋市に次ぐ人口を誇るマンモスタウンだ。

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 その川口市の玄関口は、もちろん川口駅である。京浜東北線に乗って、赤羽駅から荒川を越えてひとつ先。60万都市のターミナルだけあって、お客は多い。

今回の路線図。政令指定都市以外では全国でも船橋市に次ぐ人口を誇るマンモスタウンの玄関口「川口」

 電車が着くたびにたくさんのお客が降りては乗って。北に向かえば浦和や大宮があるわけで、川口駅を発着する京浜東北線は北行き・南行きのどちらもなかなかの盛況ぶりだ。川口駅のお客の数は7万人以上(2022年度1日平均乗車人員)。埼玉県では大宮・浦和に次ぐ第3位である。

 ところが、そんなターミナルだというのに、停まる列車は京浜東北線だけだ。線路がそれしかないのなら仕方ないと諦めもつくだろうに、傍らではJR宇都宮線や高崎線の列車(つまり上野東京ラインや湘南新宿ライン)が快走してゆく。

 
 

 川口駅付近の線路は、京浜東北線と上野東京ライン、湘南新宿ラインが並ぶいわゆる“三複線”。なのに、各駅停車の京浜東北線しか停まらない。60万の川口市民はほぞをかむ思いで通過する列車を眺めているに違いない。

 つい先だって、そんな川口市民に朗報がもたらされた。川口駅に新たなホームを増設し、上野東京ラインが停まるようになる、というお話だ。

 

 400億円ほどかかる費用はほとんどが川口市の負担で、さらに完成までには12~16年ほどかかるというから、ご時世を鑑みれば本当に実現するかどうかはまだ不透明といったところだろうか。それに、川口駅に上野東京ラインが停まって喜ぶのは川口市民ばかりで、他の駅の利用者にはさしたるメリットもない。まあ、60万都市の玄関口だから、ケチをつけるのも野暮というものか。

 
 

 ともあれ、いまのところは川口駅には京浜東北線しか停まらない。だから駅構造そのものは実にシンプルだ。島式ホームが1面あるだけの橋上駅舎。コンコースにはちょっとした店舗があるものの、アトレやルミネのような立派な駅ビルはない。どちらかというとひたすら鉄道駅に徹しているような、無機質な類いのターミナルといっていい。