Q 香港当局が正式に指名手配…周庭さんのゆくえは?

 昨年12月に、カナダに留学していることを明らかにした周庭(アグネス・チョウ)さん。「香港の状況、自身の安全、心身の健康などを慎重に考慮した結果、おそらく一生戻らないことを決意しました」などと、事実上の亡命を宣言していましたが、2月6日、香港当局に正式に指名手配されたと複数の香港メディアが報じたとのニュースを見ました。

 彼女はこれから一体どうなってしまうのでしょうか?(30代・男性・会社員)

2019年、日本記者クラブで会見をする香港の民主活動家・周庭さん(27)。香港の民主化を求めた2014年の「雨傘運動」や、2019年の反政府デモで注目を集め、“民主の女神”と呼ぶ人もいる ©時事通信社

A 逮捕状を取ったと言っても、カナダに通用するわけではありません

 心配ですよね。覚悟の決断だったと思います。いまはカナダの大学(どこの大学か明らかにしていません)に留学しているので、留学ビザで滞在しているはずです。「香港に帰らない」と言っていることから、留学ビザが切れたときに、どこかの国に亡命を申請することになるでしょう。それはカナダかもしれませんし、別の国になるかもしれませんが、詳しい話はしていません。

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2023年12月3日、インスタグラムで「おそらく一生香港に戻らない」とし、カナダの大学に留学していることを報告した(周庭さんのインスタグラムより)

 それでも香港から離れたことで、香港の民主化に向けて情報を発信できる条件を獲得しました。今後も香港の民主化を求め続けるでしょう。

 今回、香港の警察が逮捕状を取ったと言っても、カナダに通用するわけではありません。実はカナダ政府は2020年7月、香港が「国家安全維持法」を施行したことを受けて、香港との間にあった「犯罪人引き渡し条約」を停止しているからです。つまりカナダにいる限り安全なのです。

許可なくデモを組織したなどの罪で2020年12月に実刑判決を受け、7カ月後に出所していた周庭さん。2月26日、自身のYouTubeチャンネルを更新し、日中字幕つきで刑務所での生活を振り返った(YouTube「周庭チャンネル」より

 カナダには香港出身者が約30万人いるとされますが、「引き渡し条約」を停止した際、トルドー首相は「香港の人々を守る」と表明しています。中国は世界各地に勝手に「警察」の出先機関を置いていると報道されていますが、カナダ政府が「守る」と言明している以上、勝手な振舞いはできないでしょう。

 このように人権擁護に断固たる姿勢を示してくれる首相がいる国は頼もしいですね。

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