甲子園の周辺にあふれる「たくさんの“廃●●”」は何を示している?

 さらに甲子園筋を海に向かうと、浜甲子園の公園の入り口には「鳴尾球場跡地」の碑が建つ。ちょうどこの辺りで、1917~1923年にかけて中等野球の熱戦が繰り広げられた。それを知ってか知らずか、公園内の野球場では子どもたちが野球を楽しんでいる。

 

 その近くの住宅地の中には、鳴尾競馬場跡の記念碑もあった。鳴尾競馬場はのちに仁川に移転し、いまの阪神競馬場のルーツなった。その北側の武庫川女子大学付属中・高等学校のキャンパス内には、競馬場の観覧スタンドがいまも残されている。

 また、球場の南側にかつてあった100面テニスコートは、競輪場に生まれ変わり、2002年に廃止。いまでは競輪場の痕跡も消え失せて、住宅地に変貌している。こうした甲子園筋沿線へは路面電車が走っていたという。

ADVERTISEMENT

 こうしてみると、聖地・甲子園球場の周辺は“廃●●”がいくつも転がっているということになる。遊園地、球場、競馬場、競輪場、そして路面電車まで。野球観戦にやってきて、ほんの少し時間があるならば、こうした廃●●のいくつかを訪れてみてはどうだろうか。

 聖地は一日にしてならず。阪神甲子園球場が聖地になるまでの背景が、少しだけ見えてくるに違いない。(写真=鼠入昌史)

◆◆◆

「文春オンライン」スタートから続く人気鉄道・紀行連載がいよいよ書籍化!

 250駅以上訪ねてきた著者の「いま絶対に読みたい30駅」には何がある? 名前はよく聞くけれど、降りたことはない通勤電車の終着駅。どの駅も小1時間ほど歩いていれば、「埋もれていた日本の150年」がそれぞれの角度で見えてくる——。

 定期代+数百円の小旅行が詰まった、“つい乗り過ごしたくなる”1冊。

ナゾの終着駅 (文春新書)

鼠入 昌史
文藝春秋
2025年3月19日 発売

次の記事に続く 北海道のエスコンフィールドでなぜか「西日本の駅のシステム」がフル回転している話〈オープン1年目のプロ野球本拠地に1通のメールが…〉