「駅とスタジアムって、とてもよく似ているんです。多くの人が来て、交流のハブになる。駅にラッシュ時間帯があるのと同じように、スタジアムも人の流れには波があります。
試合前と試合後、また試合がある日とない日。チケットで入場するのも、改札口がある駅とそっくりですよね。だから、実際に駅の現場を見学させてもらって、ここでやっていることをウチにもあてはめるとうまくできることが多いんじゃないか」
こう話すのは、北海道日本ハムファイターズの本拠地・エスコンフィールドで施設管理を担う齋藤裕太さん。
昨年オープンしたエスコンフィールドは、まさしく国内最先端のベースボールスタジアム。臨場感たっぷりに試合を観戦できるしつらえはもとより、試合日以外でも足を運んで楽しめるような仕掛けがあちこちに。とうぜん、その運営には最先端の技術をふんだんに取り入れている……と思いきや。
「最初の1年は、ひとまず自分たちの手でやってみよう、人の手で動かしてみようというコンセプトで運営したんです。
というのも、ファイターズは50年くらいプロ野球の興行をやってきたんですけど、東京ドームにせよ札幌ドームにせよ、これまでは施設をその日だけお借りするスタイル。いわば賃貸です。
それが今回、自前の大きな庭付き一戸建てを所有することになった。だから、業務効率化ももちろん重要ですが、まず人の手で動かしてみて、現場の現実を知る。お客さまの体験価値向上のボトルネックになっているのは何かを探っていこうと考えました」(齋藤さん)
「開幕」初年度のエスコンフィールドに、ある日メールが…
エスコンフィールドが本格稼働したのは、昨年のペナントレースが開幕した3月末。試合を重ねていくにつれ、おぼろげながら課題も見えてきた。
試合前後の多くの人がたくさん押し寄せてくる時もあれば、オフの日のようにまったく人がいなくなってしまうタイミングもある。文字通り、まるで波のように流動的に変化する人の動きを、その都度、過不足なく把握しながら対応していくことである。
そんなところに、1通のメールが届く。送信元は、JR西日本のイノベーション本部に勤める井上正文さんだ。