そこで、カメラを設置してAIによって立ち入り禁止エリアに人の立ち入りがあったかどうかを常時監視することにした。警備スタッフが現場に行く必要もないし、監視カメラで常時監視する必要もない。すべてAIが判断してくれる。これにより、雨が降ったらすぐに屋根を閉められるようになる、というわけだ。
駅の「絶対に切れないように補充しないといけないもの」
ビーコンは清掃スタッフの配置の精度を高めることに貢献する。試合当日、いつどのようなタイミングでスタッフを配置すれば、快適な場内環境を保つことができるのかを、ビーコンによる情報収集とその分析によって検討するしくみだ。
また、球場内300か所ほどのゴミ箱にはセンサーを設置した。ゴミ箱にどれくらいゴミが溜まっているのかを、“見える化”するためのものだ。
「わざわざ清掃スタッフを配置して、ゴミの溜まり具合を見て確認していたんです。でも、センサーを設置すれば何パーセントくらい溜まっているかが管理画面でわかる。
そうなれば、溜まっているところに指示を出して回収してもらえばいいわけですから。溜まっているかと思ったら溜まっていなくて、まだ大丈夫だと思ったら溢れていて、などということがなくなります」(齋藤さん)
こうした技術は、いずれもJR西日本が自ら現場でも活用しているものばかりだ。
「AIカメラによる画像解析はまさに立ち入り禁止エリアに人が入っていないかを監視することができるわけです。ゴミ箱も、同じですよね。たとえば駅のトイレのトイレットペーパー。あれ、なくなると苦情になるんです。
だから絶対に切れないように補充しないといけない。業務用の長いロール紙を使ったりしてはいるんですが、いまでは一部の駅トイレにセンサーを設置しています。つまり、こういった課題を共有しながら、応用しながらいろいろと困りごとの解決に使ってもらえれば、というのが私たちイノベーション本部の大きな仕事なんです」(井上さん)
鉄道の現場で培った技術やノウハウ。それがまったく違うように思える現場に“ハマる”こともある。とくに野球場はターミナル駅によく似た環境にあるため、JR西日本の技術を展開しやすかったのである。