「国内外のいろいろなスタジアムにはすべてそれぞれの特徴がある。そのままエスコンに当てはめてもダメ」
「国内外のいろいろなスタジアムとか、あとは工場とかも見させて頂いて勉強しましたが、それぞれの球場でそれぞれの特徴があるんですよね。だから、そのままエスコンに当てはめてもダメなんです。本質を理解してエッセンスを抽出してアレンジしていく。その作業がどうしても必要になります。
その点、JRさんの技術はほとんどそのままでも使えるんですよ。これこそ、駅とスタジアムがよく似ているということ。声がかからなかったら、駅や鉄道に似ているなんて思いもしなかったと思います」(齋藤さん)
JR西日本の井上さんは、「鉄道だけでやっていける時代ではなくなった」と厳しい経営環境が背景にあることを打ち明けつつ、次のように話す。
「鉄道の現場で使っている技術って、けっこういろいろなところでも応用してもらえると思うんですよね。ですから、エスコンフィールドもそうですし、他にはいろいろな工場の現場などでも使ってもらったり。もちろん同業の鉄道事業者にもお声がけをさせてもらっていますが、どんどん幅を広げていきたい。
私たちの強みは、現場の困りごとを解決するために頭を捻ってきた経験。だから、ただ技術を提供するだけではなくて、それぞれの困りごとに寄り添ったご提案ができると思っています」
すべて人の手でできればもちろんいい。しかし、どうしてもそうはいかない。ならどうすれば…?
ちなみに、AIやセンサー、ビーコンの導入による効率化などと聞くと、どうしても“人員削減”と思われがちだ。このあたりはどうなのかと尋ねると……。
「エスコンはエンターテインメント施設なので、体験価値を上げていくことがまた来て頂くためのキーポイント。なので、機械にできることは機械に任せて、体験価値を上げる仕事に人材をシフトしていきたい。
試合中はもちろんですが、試合前も試合後も、ファイターズが勝っても負けても楽しんで帰ってもらえるスタジアム。そのために、機械と人でうまく棲み分けをできればと考えています」(齋藤さん)
「鉄道も現場ではすでに人手不足が表面化してきています。すべて人の手でできればいいんですが、どうしてもそうはいかない。なので、機械にできることは機械に任せて、お客さまと接して乗降の介助をしたり、ご案内をしたりという点に力を注いでいかないといけない。そのための、技術なんです」(井上さん)
不特定多数の人がやってきて、人の集まる交流の拠点になるターミナル駅、そしてスタジアム。労働力不足の進行が避けられない中で、『楽しいターミナル』『楽しいスタジアム』を実現するための課題や解決に道筋もよく似ている。やはり、駅とスタジアムはそっくりなのである。(写真=鼠入昌史)