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 まずわたし、筋金入りの偏食で、子どものころから野菜全般が苦手。給食の時間は地獄でした。ドレッシングのかかっていないレタスを無理やり口に押し込めながら泣いてました。そして少食のため、すぐお腹がいっぱいになってしまう。ただし食い意地は人一倍張ってるから、不完全燃焼感だけが残るという……。

 大人になってからはだいぶマシになりましたが、いまでも定食やお弁当を完食できるのは快挙の部類で、一人暮らし時代は基本的に白米と納豆で栄養を摂ってきました。

 野菜だけでなくスイカもメロンもダメ。甘いものの許容量も少なく、パフェは3口くらいで「もう充分」となる。人と同じものを美味しいと思えないことが、性格が歪む大きな原因であったことは間違いありません。そして一度気に入ったものを、飽きるまで延々食べつづけるという謎の習性があります。

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 そんなわけで、同棲生活をはじめるにあたっていちばん頭を悩ませたのが、ほかでもなく毎日の食事でした。まず第一に、彼氏に料理が下手ってことがバレるのが嫌。

 なにしろ奴ら(メンズのこと)は結婚相手の条件に「料理がうまいこと」をぬけぬけとした顔で挙げ、結婚したあかつきには毎日ただで美味しいごはんを作ってもらえると思っている傲慢な生き物です。彼氏に料理が下手なことがバレてはならぬ! その一念で、デート期間中にうちでごはんを食べるときは、鍋やカレーといった万能料理でごまかしてきました。しかしその手ももう限界だ。一緒に暮らすということは、毎日一緒に食べて生きていく、ということなのですから。

 それにしても、わたしはまたしても腑に落ちません。料理は女がするものであるという、古くから脈々と続く役割の押し付けに。ごはんを作るというのはものすごい手間です。労働です。買い物に行き、食材を選び、重い荷物を持って帰り、頭を捻って献立を考え、調理し、後片付けする。これが仕事なら、一食につき5000円はもらわないと割に合わない。彼氏はなんならわたしより料理センスありげなのですが、登板頻度でいうとだいぶ少なく、どうも料理に関して「自分はスタメンではなく補欠。むしろ監督」くらいの心持ちでいる模様。“お料理がんばらなければ同調圧力〞で押し潰されそうなわたしに対して、ノーダメージな彼氏が憎い。しかし腹は減るので、クックパッドを開いて悲しい気持ちで包丁を握るのでした。  

〈ちなみにこのエッセイから10年が経った現在、わたしはほとんど料理をしていません。性別役割分業ではなく「向き不向き」で家庭内の役割をこなそうと論陣を張って一人ウーマンリブを繰り返した結果、「やらなくていい」という地位を獲得しました。しかし、同棲初期に嫌々ながらも料理に励んだことで、料理スキルがそこそこレベルアップしたのはよかったなぁと思います。料理がまったくできないのは普通に不便なので。不便というか、生存に関わることなので!〉