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 引っ越し事件から見えてきた彼氏の習性はこの3点。

・基本的になにもしない

・そのわりに口は挟んでくる

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・感謝の言葉が足りない

 そう、引っ越しの時点で、のちの同棲生活でわたしが彼氏に抱く不満のすべてが出揃っていました。そしてこの日を境に、わたしは「男性とはなんぞや?」という迷宮に入り込むことになり、今後連載が続く限り、長々と、くどくどと、その研究成果を報告していくつもりであります。

 兎にも角にも、デート期間中はギリ保たれていた思春期恋愛めいたふわふわした世界観は、同棲をはじめて以来「生活」という魔物によって強制終了したのでした。まだ結婚もしてないのに。

 そして以降、それまでいいところを見せていた彼氏の化けの皮が剝がれ、もちろんわたしのもボロボロと剝がれまくり、ついにあの悪名高き、皿洗い戦争が勃発するに至るのです。  

〈個人を性別に一般化して「女は」「男は」で語る行為は、「主語がデカい」と評されることもしばしば。ですがこのエッセイでは、ジェンダー的に自分が女で、相手が男であるがゆえに起こる衝突を書くことに意味があると思い、相手を「彼氏」(結婚後は「夫」)という一般名詞で書いています。

 とはいえ、完全な一般人である彼氏の非を、わたしの側から一方的に描いて世間に発表するのはどうなんだろうと、単行本では公正を期するべく個別にページをもうけ、『男のいいぶん』として彼氏に原稿を数本、書いてもらいました。この文庫版は単行本と構成を大きく変えたため、個別ページはやめて、この後日談パートに内容が対応している箇所を引用していきますね。

 ちなみに引っ越し事件に関しては、「同棲初期の彼女は客観的に見て無職」「どう見てもヒマそう」「こちとら仕事しながら精一杯やっていたんですよ」とのぼやきが。物書きの配偶者がエッセイなどで私生活を晒されることはプライバシーの侵害でもあり、わたしも最近はセーブするようになりました。でもそうすると、「いる」のに「いない」ことになってるという、存在が不可視化されてしまう問題が出てきて……扱いが難しいよ!〉

皿洗い戦争

 皿洗い……その類まれなる面倒くささは筆舌に尽くしがたいものがあります。わが国において洗濯機などよりはるかに開発が遅れた食洗機は、いまだ各ご家庭に完備されていない状況が続いています。もちろんうちにもありません。いや、検討に次ぐ検討を重ねた末、導入をあきらめたのです。