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 森田は『全裸監督』に出演した後も、演技のワークショップに通い続けていた。『情熱大陸』(MBS/TBS系 2019年12月15日)には、そのときの様子が登場する。恋人が浮気したという簡単な設定を与えられ、5分足らずで役を身体に入れた後、すさまじい怒りの即興芝居を40分以上続けてみせた。演技が終わっても、役が抜けきらずに放心状態の場面も映し出されていた。森田が憑依型の女優だということは、満島の次の言葉が証明している。

「現場が終わって、この前、お会いした時もまだ黒木香でした」

森田望智公式Xより

オーディションは落選続き…意識を変えるきっかけとなった一言とは

 1996年、神奈川県生まれ。フィギュアスケートに打ち込んでいた小学生の頃、家の近所で映画やドラマの撮影をしているのを見て、「あの中の一員になりたい」と思うようになった。現場でスカウトされて、女優になることを志したが、オーディションは落ちてばかりだった。

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「どうしたらいいかもわからないし、何が正解なのかもわからないし、焦りもあるし、みんなはどんどん前に進んでいくし……本当にぐちゃぐちゃになったような感情がずっとあった」(Harper's BAZAAR Japan 2022年1月17日)。

 オーディションに受かる夢は何十回も見た。受かったと喜んだところで目が覚めるパターンが一番多かったという。

 考え方が変わるきっかけは、映画『エゴイスト』(2023年)などで知られる松永大司監督のワークショップへの参加だった。悩みを吐露したところ、「役者辞めたらいいんじゃない?」とあっさり言われて、自分には「覚悟」が足りないことに気づいたという。

「お芝居のうまさとかではなく、求められているのは“この人の演技がみたい”と思わせられる人。それが何かを考えたときに、強い覚悟だったり、例えば歌でも、ただうまいより魂がこもっている人のほうが私自身も好きなので、そういうことを目指すようになりました」(「週刊女性」同前)。

 少しずつ仕事が増えてきた頃、『全裸監督』のオーディションの話が舞い込んだ。そこからの活躍は多くの人が知るとおりだ。

4月25日から配信がはじまったNetflix『シティハンター』ではヒロインの槇村香役に抜擢(Netflix公式サイトより)

「自分とはかけ離れた人を演じたい」

 女優をしていて一番面白みを感じるのは「与えられた役に近づこうと頑張っている時です」と語る(「SWITCH」2019年12月号)。役を演じるための準備の時間はどれだけあっても足りないという。

「自分とはかけ離れた人物を演じたい。そんな欲望がムクムク湧いてきています。役柄と自分が違っているほど、その人物像に向けて深く掘り下げていく作業が必要になる。それがおもしろくてたまらないんです」(AERA STYLE MAGAZINE 2019年11月29日)