直観的にわかる
さて、センスというカタカナ語は、どういう言葉なのでしょうか。
和製英語みたいにも見えますが、そうではありません。もとの英語、senseという単語を辞書で引くと、カタカナでセンスと言うときの意味が載っています。「ユーモアのセンス sense of humor」とか、「服のセンス dress sense」といった例がそれに当たるでしょう。
こうした意味でのセンスとは、ある事柄について、「なんとなく、深く考えなくてもわかっている、わかってしまう」というような意味だと思います。
英語でのsenseについて、詳しくは、第一章で調べることにしましょう。ここでは、まず、次のように定義しておきます。
・最初の定義:センスとは、「直観的にわかる」ことである。
ここでの「直観的に」とは、「なんとなく、深く考えなくても」というのを言い換えたものです。キーワードは「直観」です。英語ではintuition(イントゥイション)と言いますが、これは、古くから問題にされてきた哲学の概念です。哲学の専門用語としては、直「観」と書きます。「直感」との違いは、まあ今回は気にしないでおきましょう。
辞書でsenseを引くと、基本的な語義として、「意味」、「感覚」、「判断力」などが並んでいます。それらに加えて、というか、それらを合成したような語義として、カタカナで「センス」と書いてある辞書もあります(この原稿はMacで書いていますが、Macの辞書アプリに入っている『ウィズダム英和辞典』には書いてあります)。
この話の続きは、第一章に送ることにします。
さて、センスとは「直観的にわかる」ことである、とします。
直観的に——というのは、いろんな含みがあります。ラフに言えば、ごちゃごちゃ考えないでわかる、ということです。もっと説明するなら、「順を追って推論していった結果わかるのではない」とか、「ディベート的に、ああでもないこうでもないと悩んで結論するのではない」などと言えそうです。
すなわち、「一挙に」、「全体的に」、「総合的に」わかることです。
スピード感も伴っています。「パッとわかる」わけです。なんとかわかろうと努めてわかるのではなく、「もうわかっている」というニュアンスもあります。などと言うと、そんなことできるか! とイライラの声が聞こえてきそうですが、でも、広い意味で「直観的」判断というのは普段からやっていることです。
家から一番近い駅に行く。十分慣れていれば、直観的に歩きます。どう行くかをごちゃごちゃ考えたりしません。カツカレーを食べる。食べ方を「順を追って推論」したりしません。
「りんご」と聞けば、どういう果物かわかります。頭の中で辞書を引いたりしません。人の話も、複雑になればいろいろ考えるわけですが、言われたことの基本的な意味はパッとわかっている。買い物をするときの簡単な足し算も、どういうわけか人間にはそれがパッとできる計算能力がある。