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 まるで修行僧のような泰然とした物腰に面食らい、「あなたが4人を殺害したとは信じられない思いです」と率直な気持ちを告げると、表情が一変した。顔を苦しげにゆがめ、

「僕は猫をかぶっていたんです」

 別人のような低い声で呪いの言葉を吐き散らす。

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「うちの親はバカでいい加減で、僕が小学4年のとき、借金が原因で夜逃げして、小汚いアパートに身を潜めて、ドブネズミみたいに生きてきました。学校では貧乏だからとイジメられて、すべてがつまらなくて、どんどんワルくなって、そのワルい自分を隠していたんです」

強姦、傷害事件…次々と悪事に手を染めた

 長じて祖父の目を蹴り潰した光彦は、だれはばかることなく暴れ回り、おぞましい犯罪に手を染める。真夜中、杉並区高円寺の友人宅からクラウンを飛ばして帰る途中、歩道を歩く若い女に目を留め、ゆっくりと停車。ドアを開けて外へ。以下、手紙より。

〈いきなり後ろから髪の毛をわしづかみにしてひきずり倒し、顔から血がしたたり落ちるまでアスファルトに何度も頭を叩きつけるという(中略)限りなく八つ当たりに近い、非道いものでした。それでも手は止まらなくて、さらに鼻の骨が折れたのを確認しながらも、鼻血まみれの顔を夢中で殴りつけるという徹底ぶりで、ひと頻(しき)り衝動が収まるまで力まかせに暴行を続けたのです〉

 犠牲者は24歳のOLだった。光彦はぐったりした女性をクルマに乗せ、発進。青梅街道をひた走って都心を抜け、千葉県船橋市の自宅アパートへ連れ込み、強姦した。

〈一度強姦や強烈な傷害事件を成功させ、クリアしたことで、変な方向に自信を持ってしまい、もう一度やってみよう、出来るはずだ、出来るだろう、となっていったのです。少なくとも犯行の最中だけは、いつもの自分と違う無敵になれますから〉

 悪魔のような万能感を得た光彦は翌日深夜2時、一家4人惨殺事件につながる凶行に及ぶ。

15歳の少女をターゲットに

 千葉県市川市の住宅街。夜遅くまで勉強していた15歳の少女はシャーペンの替え芯を買いに自転車でコンビニへ。自宅へ戻る路地で光彦のターゲットとなった。クルマで後ろから追突。転倒し、ケガを負った少女に優しく声をかけ、救急病院へ。治療を終え、帰りの車中で光彦は豹変。ナイフで脅してアパートへ連れ込み、強姦。現金を奪い、高校の生徒手帳から氏名と住所を控えている。