知っている人は知っている「常滑という町の本質」
と、こうして常滑駅の周りを軽く歩いてみたけれど、実のところこれだけでは常滑という町の本質にはまったく近づけていない。そう、知っている人は知っている、常滑の町。この町は、本質的には空港でもボートレースでもなく、もちろんイオンでもない。古くからの窯業、焼きものの町なのである。
常滑駅のすぐ南側で、例の大通りは東西の大通りと交差している。ここで左に折れて東に向かって坂道を登ると、すぐに見えてくるのが巨大な招き猫だ。両サイドを高台に挟まれて、招き猫も高台の上から見下ろしてくる。まるで、「ここまで登って来いよ」と招かれているようだ。
そんな招き猫の招きに応じて高台の上に登ってゆくと、そこには人がすれ違うのがやっとなくらいの細い路地がくねくねと張り巡らされている。「やきもの散歩道」などと呼ばれるこの高台の上の路地には、昔ながらの窯元やギャラリーがひしめき、その合間にはオシャレなカフェまでが軒を連ねる。観光客の姿も目立ち、なかなかの観光名所らしい。件の招き猫像を熱心に撮影している若い男女の姿もあった。
そんな路地をくねくねと進んでゆくと、奥まったところには陶製の土管がずらりと並んだ土管坂なる細い急坂もあった。言われてみれば、常滑の町ではあちこちで陶製の土管を見かけた。
土管なんて、ドラえもんの空き地くらいでしか馴染みがなかったが、この土管坂は常滑のいちばんの観光スポットのひとつになっている。
曲がりくねった散歩道を進んで坂を下ると、なにやらずいぶん雰囲気のある場所に…
そんなやきもの散歩道をあっちへこっちへくねくねと、南に進んで坂を下ってゆくと、神明社という立派なお社の脇に出る。
そこから先は、やきもの散歩道というわけではないようだが、それでも昔ながらの古い商店街の痕跡が濃厚に残っているエリアだ。中には「常滑キネマ」などという看板を掲げた木造の古い建物もあった。大正から昭和の初め頃にかけて営業していた映画館、活動写真館か何かなのだろうか。
このエリアも変わらずに細い道がくねくねと入り組んでいて、お寺や神社の類いも目立つ。常滑駅からは高台の散歩道を経由して、寄り道もしながらだとだいたい30分くらい。この一帯が、古くからの常滑の中心地なのだろう。