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鳥取県庁の職員はこの条件下で、どのように使ったのか

 事務作業の補助としての活用に限定する。生成された情報には誤りが含まれていることを前提に必ず情報の正確性を精査する。個人情報や内部の情報システムに係る重要情報を入力しない。著作権侵害等が危惧される情報の入力及び転用行為は行わない。プログラムコード生成機能を悪用し不正ソフト等を開発しない--などと列記した。

 こうした条件の下で、職員達はどう使ったのか。

 ChatGPTに文章を要約させたり、翻訳させたり、プログラム作成時の補助に使ったりという場合に限定されたようだ。全体のうち8割がプログラム作成補助だったといい、全国の自治体でも極めて異例だった。

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 これには理由がある。鳥取県庁では20年ほど前から、簡易なデジタルツール(システム)については職員が開発を行ってきた。「業務を熟知している担当職員が自分の手でシステムを作っていて、鳥取県庁の文化になっています」と下田局長は語る。

 そのため、デジタル局が職員向けの実技研修会を定期的に実施しており、フォローアップのための相談窓口も毎週開いている。

 だからこそ、プログラミングの補助に生成AIを使った職員が多かったのである。

「先端技術と民主主義のあり方を考える研究会」では、そのような利用状況も踏まえての議論になった。

 まず、「要約、翻訳、プログラミングという利用であれば、安全でよいのではないか」と是認する声があった。が、逆に「生成AIは非常に大きなインパクトを持つ技術だ。要約、翻訳、プログラミングだけでは全体のごくわずかでしかない」とする指摘もあり、評価は分かれた。

「ブラジルでは裁判官が生成AIの出力結果をそのまま判決文に使い逮捕」

 積極的に使うべきだと考える委員の中には、リスクを交通事故になぞらえ、「毎年2000人以上が交通事故で亡くなっており、安全性を考慮すれば自動車は禁止となる。しかし自動車には利便性があり、安全性を考慮しながら乗っている」という意見を表明する人もいた。「『○○は認める』と限定する形のルールは、職員の思考停止を招き、創意工夫の意欲やセキュリティ意識もそいでしまうので、避けるべきではないか。『リスクがあるから禁止する』では、誰も車を運転できなくなる」という苦言もあった。

 しかし、人間は「易きに流れる」。

「アイデアの検討に使うとしながらも、結局は出てきたものをそのまま貼り付けるようなやり方をする者も現れると考えられる。いかにしてガイドラインに適切に示せるかが課題」と懸念する声もあった。

「ブラジルでは裁判官が生成AIの出力結果をそのまま判決文に使い逮捕される事件があったが、このような方向に進むのは間違いないのではないか。人間が行う範囲が次第に狭まってくる。人間によって判断すべき領域は何なのか、見極めて人間を育てていくことが重要」と主張する委員もいた。