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反田恭平さんと出会い、人生が変わった

塩谷 それは、務川くんの事務所の社長であり、相方でもある反田恭平さんのことでもありますか?

務川 彼もまさにそうです。彼との出会いがなかったら僕の人生は全く別のものになっていたと思うし、これまで本当に大きな助けになってきてくれた。だから反田くんが「これ弾きたい」と言ったら「じゃあ弾こう」と思わせられる特別な存在だし、彼のどんなワガママも聞いてあげられます。

務川慧悟氏

塩谷 ものすごい愛! 反田さんはご著書を拝読するだけでもアクティブで野心的な方という印象なのですが、きっと性格はまるで違いますよね。

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務川 真逆です。

塩谷 そうしたお二人が相性がいいというのは奇跡的なことだな、と。根底に互いへのリスペクトがあるからこそ、各々が持つ車輪のリズムが違ってもうまく噛み合うのでしょうね。

 いまはフィルターバブルと言われるように、自分と波長のあう人だけとSNSで繋がって、そうした居心地の良い世界に閉じこもってしまうことが多い。そんな時代だからこそ、異なる性格の人と手を取り合うことこそが大切だな、と常々思っています。

 私のデビュー作『ここじゃない世界に行きたかった』は、コロナ禍でいろんな人の意見が対立し、世代や立場の異なる人が「あっちは悪でこっちが正義だ」と語ることが増えたなかで、「視点の異なる友人」を増やすことはできないだろうかと願いながら書いた一冊でした。

こういうものの見方があったのか!と気付かされる文章

務川 僕が塩谷さんの文章に触発されるのは、まさに自分とは異なる「視点」を持っているからなんです。僕からすると、こういうものの見方があったのか!と気付かされることが沢山書かれていて。「僕たちが生きる普通の日常は、本当はもっと美しいものなんだ」ということを、リアリティをもって感じさせてくれる。

 塩谷さんの文章の厚みって、芸術方面への感度が高いのと同時に、もともとWEBライターとして活躍し世の中の実務的な仕事をされてきたという、両者がバランスよく入り混じったところから来ているのではないか、と僕は感じています。

 あとは一つのトピックに対して、たぶん書けることは10あったなかで一つだけ選び抜いたんだろうなと感じることが多いです。

塩谷 ゴールを決めずに悩みながら書くことが多いので、ボツになる分量はかなり多い、まさにコスパの悪い書き方をしています。こっちの方向性もある、あっちの方向性もある……と手探りで探していくなかで、想定していなかった方向に文章が転がっていき、その結果「これだ!」と道が拓けていくこともある。そうやって書いている時間は、自分にとってすごく贅沢なことをしているように思いますし、本当に楽しい。もちろん苦しさもあるのですが、苦しくも楽しいんです。