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2001年のアニュアルレポートで、当時の大塚陸毅社長は「徹底的にお客様の視点に立った考え方を打ち出していかないと、当社のサービスを選択していただくことは難しい」とした上で、「私は、常日頃言っていますが、ある物事をやるかやらないか迷ったときは、お客様の利便性が向上するかしないかという視点を常に持てば、答えはわりと簡単に出てくるものです」と語っている。

これは綺麗ごとに過ぎなかったのか、20年が経過して悠長なことを言っていられなくなくなってしまったのかはわからないが、いずれにせよ鉄道は事業者、利用者、地域、社会のどれが欠けても成り立たない公共交通機関だ。利用者との信頼関係を築かずして、どんな未来像があるというのだろうか。

枝久保 達也(えだくぼ・たつや)
鉄道ジャーナリスト・都市交通史研究家
1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行う傍ら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』(青弓社、2021年)で第47回交通図書賞歴史部門受賞。Twitter @semakixxx