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そしてなんといっても、これほどテレビ本来の生放送の醍醐味を味あわせてくれた番組もなかった。そこには、生だからこそ得られる究極のハラハラドキドキ感があった。

生放送は、見ている視聴者に同じ時代を生きているという高揚感をもたらす。そしてヒット曲も、その時代ならではの空気感を背景に生まれてくるものだ。その点、すぐれた音楽番組は、すぐれた報道番組の要素を持つ。なにも政治や経済だけがニュースではない。ヒット曲もまたひとつのニュースだ。

だから生放送で聞くヒット曲には、格別なものがある。しかも『ザ・ベストテン』の場合は、視聴者が参加できるレコード売り上げやリクエスト順位で決まる純粋なランキング方式。私たちは、「この時代に生きている」という実感をこれ以上ないほどに得ることができたのだ。

太田 省一(おおた・しょういち)
社会学者
1960年生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビと戦後日本、お笑い、アイドルなど、メディアと社会・文化の関係をテーマに執筆活動を展開。著書に『社会は笑う』『ニッポン男性アイドル史』(以上、青弓社ライブラリー)、『紅白歌合戦と日本人』(筑摩選書)、『SMAPと平成ニッポン』(光文社新書)、『芸人最強社会ニッポン』(朝日新書)、『攻めてるテレ東、愛されるテレ東』(東京大学出版会)、『すべてはタモリ、たけし、さんまから始まった』(ちくま新書)、『21世紀 テレ東番組 ベスト100』(星海社新書)などがある。