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患者囲い込み競争を加速させる「アフィリエイト広告」

 患者の背景や基礎疾患は多様であるにもかかわらず、オンライン診療の広告で目立つのは、対面診療で処方されるのと同じ薬を「診察料0円」「初回6か月分無料」で「最短24時間以内」にお届けしますといったコスパを強調した宣伝文句だ。中には「とにかく薬だけあげるから試してみて」と言わんばかりのネット広告も散見される。もちろん自由診療であれ無診察治療は医師法違反である。

 オンライン診療ビジネスの患者囲い込みでさらに大きな役割を果たしているのが、成果報酬型のアフィリエイト広告だ。例えば「オンライン診療」「AGA」で検索すると、「AGAオンライン診療TOP 5」などのランキング形式のアフィリエイトサイトが真っ先に目に入る。どこへ行っても、だいたい同じクリニックが上位にランキングされており、こうしたサイトが一部のクリニックの集客を加速させている状況がうかがえる。

 アフィリエイトサイトには成果報酬の料率が高い企業の広告が目立つように配置されているため、ランキングが必ずしも医療の質を反映したものでないのは言うまでもないが、こうしたサイトを閲覧する消費者はあたかも通販サイトで月額定額制のサブスクのプランを選ぶように、カジュアルな気分で大事な受診先を選びかねない。

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 こうしたオンライン診療の広告を磯崎医師は強く問題視する。

「患者側にもリテラシーが求められますが、悩んでいる人の心をくすぐるように非常にうまく広告が作られているので、思わず信頼してしまう方は多いと思います」

©AFLO

「女性の健康のど真ん中」の大事な薬もお金儲けに利用されている

 宋医師は自院でもオンライン診療を実践しており、決してオンライン診療自体に反対しているわけではない。ピル処方も「最初は対面診療が必要だけど、安定してきたらオンラインにして対面は年1回くらいにして全然いい」という考え。磯崎医師も対面診療を補完するためのオンライン診療、僻地(へきち)・離島の医療レベルを上げるためのオンライン診療は安全を担保した上で進めていいという立場。懸念しているのは、病院や診療所ではなく実質的に営利企業が 医師を組織化し、医療機関と提携して診療・処方をしているとして合法性を装い、フォローアップも不十分な医療を展開するオンライン診療ビジネスの拡大だ。

「自由診療であれば診療所を置かなくてもドクターがいればオンラインでできてしまう。この盲点を突く形で、誰の監視もない中で企業が医師に診察させて薬を配送しているところが非常に問題だと思っています」(磯崎医師)

「低用量ピルは子宮内膜症や卵巣がんなどを予防する効果もある、女性の健康のど真ん中の薬です。それをお金儲けだけに利用するビジネスを野放しにしているのはどうなんだろうと思います」(宋医師)