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AGA治療もGLP-1ダイエットも「ネットでお気軽に」の危険性

 オンラインクリニックのAGA治療で使用される「フィナステリド」も、ダイエット目的で使用される「リベルサス」などのGLP-1受容体作動薬も、経口避妊薬と同じく処方箋が必要な医薬品。「フィナステリド」は保険収載されていないため全額自費の自由診療でのみ処方され、発毛剤の「ミノキシジル」と併用して使われることが多い。「リベルサス」は糖尿病患者に使用する場合のみ保険適用となるため、こちらもダイエット目的で使用する場合は全額自費となる。

 神奈川県保険医協会理事の磯崎哲男医師(小磯診療所院長)は、企業主導で大々的にテレビCM・ネット広告を打って患者を囲い込む「オンライン診療ビジネス」が拡大している現状に警鐘を鳴らす。

「『フィナステリド』はもともと前立腺肥大症治療薬として開発された薬で、後に脱毛を抑制する効果が報告されたことからAGA治療薬として承認されました。当然主作用もあれば副作用もあります。爆笑問題がAGAのCMをやっていた頃は『ちゃんと医療機関を受診しよう』という内容でしたが、オンライン診療が解禁されてからだんだん『ネットでお気軽に』という風潮になり、安全性よりも時間の短縮や便利さばかりが前面に出るようになりました」

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「GLP-1製剤は、私たちも糖尿病患者に使用して痩せる効果を実感しているので、痩せたいという方が全額自費で治療を受けるケースは結構あると思います。しかし、糖尿病患者に使用する場合は病気を治すというメリットがあるから、副作用というデメリットをカバーできますが、何の病気もない人にダイエット目的で使えばデメリットの方が大きくなる。膵炎などの副作用が生じるケースもありますので、問題は大きいと思っています」

磯崎哲男医師(小磯診療所院長) 「誰の監視もない中で企業が医師に診察させて薬を配送しているところが非常に問題だと思っています」

「保険診療という選択肢」を奪っている可能性

 オンラインクリニックによる低用量ピルの処方については別の問題も指摘されている。低用量ピルには保険適用のピル(LEP)と保険適用外の自費ピル(OC)があり、生理痛(月経困難症)を抱える患者は保険診療でピルの処方を受けられるのだが、宋医師によると、オンライン診療ではその情報が十分に提供されていない場合があるという。

「月経困難症がある方は『マーベロン』や『トリキュラー』よりももっと新しくて副作用が少ない超低用量タイプのピルの処方を保険診療で安く受けることができます。一部のオンラインクリニックは、保険診療を行うと行政のチェックが入るので、保険が使えることを隠して全額自費で処方していたりするんです。ホームページを見ても、そもそも保険適用のピルがあるということが全くわからない場合が多い。保険診療という選択肢を実質的に奪っている可能性があるんですよ」