元横浜DeNAの大田阿斗里は2017年に警視庁警察官となり、第四機動隊に配属されてからは硬式野球部にも所属した。アマチュア時代、プロ時代に続くいわば第3の野球人生のスタートだった。
「野球に変わりはなかったですね。クラブチームや大学生と練習試合もやるんです。子供の頃から野球をやってきて、チームプレーで培った協調性は警察官には不可欠ですし、全員が同じ方向を向かないと試合に勝てないのと一緒で、警察官も組織に属する者がみな同じ方向を向かないと務まらない。元プロ野球選手と警察官の相性はとても良いと思います。野球選手というか、スポーツ選手のセカンドキャリアとして、警察官は適していると思いますので、もっと警察官を希望する元アスリートが増えてほしいなって思います」
野球選手として2度目の引退を決めた理由
機動隊員となって1年が経過した頃、大田はプロ時代から痛みのあった右肩の手術を決断する。
「警視庁第四機動隊の野球部には目標がある。都市対抗や全国クラブ野球選手権大会など、社会人の全国大会出場です。戦力として貢献できるよう、手術してもう一度、思いっきりボールを投げたかったんです」
もうひとつの理由もあった。
「息子が野球を始めたので、息子としっかりキャッチボールをしたかったんです」
大田は昨年の春の大会を最後に野球選手としても2度目の引退を決めた。
「休日に息子の練習に来て欲しいという声もあって。警視庁の野球と息子の野球とを天秤にかけたわけではないですし、行き場のなかった自分に再び野球をやる機会を与えてくれた警視庁の野球部に恩返ししたい気持ちはあるんですが、今は家族の時間を優先したかったんです」
長男は今年、小学6年生になった。進路を考える時期でもある。
「やっぱり、期待しちゃいますよね。自分と同じ道を歩んでほしいとか、自分が活躍できなかったプロで活躍してほしいとか、そういうことはあまり考えないようにしています」
現在は巡査部長への昇任を控え「留置管理第二課」に所属、警視庁本部や警察署、検察庁などを巡回し、被留置者を護送する任務にあたっている。
「いずれは生活安全部の少年育成課などで、青少年の育成にも携わってみたいんです」
34歳になったかつての甲子園ヒーローは、屈託のない笑顔で将来の夢を口にした。