犯人と1時間以上話し込んで
1月29日付東京朝日(東朝)は、タンスの引き出しにあった現金4円(現在の約1万4000円)と、住職の衣類がなくなっていると報道。菓子を盛った鉢も出されており、たばこの吸殻の数から見ても、被害者と犯人は1時間以上対談。近所の人間か、知り合いとみられるとした。
被害者については「常に品行方正で非常に親孝行」「悪い評判は聞かず、もちろん情夫などがいる様子もない」と書いている。同じ日付の東日、國民、時事、都は、凶器が生け花用の小刀で、さやが発見されたと報じたほか、容疑者について時事は「付近の者」、都は「日頃、寺に出入りしている男の僧侶」と踏み込んだ。
師の聞聲尼は1月30日付國民でこう語っている。
「このいおりは教道と私と私のめいの3人暮らしだが、私は時々上京し、めいも高等小学校に通学しているので、昼間は教道1人に留守番をさせておくことはたびたびあった。現場の模様を見ると、私か教道に相当面識がある者のようにも思えるが、おそらく犯人が私の知人と偽って、教道が茶菓などでもてなしているうち、みだらなことを口にしたのを教道があさましく思って台所に逃げ込んだのを、追いかけて凶行に及んだのではないか」
その後報道された内容は(1)現場に血痕が付着した足袋の跡が見つかり、犯人の足は十文(24センチ)(2)犯人は僧侶、化粧品などの行商人というようなうわさがある――など。その中で気になるのは1月31日付都の記事だ。
「尼の情夫を探す」の見出しで、「犯人は教道の元情夫で、旧交を迫られ、断って被害に遭ったとの説が起こり、その方面を捜査中。教道は性質多情で、2~3年前、感應寺にいたころから出入りの若者と通じ、半ば懲戒的に鎌倉に移されたという」と書いた。そして、2月2日付國民には、やはり次のような記事が「某名探偵家談」として登場した。



