2つの事件の“共通点”

 共通點(点)多 諏訪森老尼殺と鎌倉美尼殺犯跡

 諏訪ノ森の尼殺し、鎌倉の尼殺しと2件の事件を並べて犯罪の手口や経路を探偵的に研究してみると、あるいは偶然の一致かもしれないが、同一犯と断定してみたくなる。なぜかというと、第一に安全な尼寺を選び、尼を殺したのが同一。さらに、ともに殺す前に恥ずかしめていること。そして、現場に同様に巻きたばこの吸殻が火鉢の灰に突き立ててあったこと。いずれも「敷島」で8本ずつ。たばこを吸うときの長い習慣だと思われるが、吸い口の形状も共通だった。

 さらに、悠々とたばこを吸いながら被害者と相対していたことは明らかで、そこに1つの共通した人格が表れている。相違点は、一方は絞殺で他方は刃物を使っていることだが、犯人は用意周到であり、凶器を持っているときにはそれを使ったと考えればいい。

諏訪ノ森と鎌倉の同一犯を示唆した國民の記事

 吸殻の本数が時事の第一報と違っている。『警視庁史大正編』によれば、実際にも神奈川県警察部から「同一犯人ではないか」という連絡があり、双方の刑事が出張して調べた結果、「やはり同一犯人」と認定した。「警視庁と神奈川県は、犯人をよそで挙げられては面目に関わるとばかり、懸命の捜査を開始した」(同書)。捜査が継続していた中、鎌倉の事件から約半年後に尼寺を狙った事件がまた起きる。『警視庁史大正編』の記述を見よう。

「40歳前後の鼻筋の欠けた男」

 7月18日の夜、(東京府)杉並村(現東京都杉並区)阿佐ヶ谷の法仙庵という尼寺に強盗が押し入り、門井泰岳という69歳の尼を暴行し、現金5円(約1万8000円)と、法衣その他衣類19点を強奪して逃走する事件が起こった。新宿警察署員が臨場して被害者に話を聞くと、犯人は「年齢40歳前後、身長5尺2寸(約157センチ)ぐらいの色白の男で鼻筋が欠けている」ことが分かった。

 この特徴と被害品の発見を重点に捜査は進められた。そのうち、捜査陣の中から、前年の諏訪ノ森の老尼殺しと同一犯人らしいと言いだした者があり、皆もこれに賛成して、その方針で捜査を進めた。

 ここから、場面は容疑者逮捕に向かう。(つづく)

次の記事に続く 「刑事の2~3人殺すぐらいはなんともない」72歳と25歳の女性らを暴行し殺害、日本を戦慄させた“連続殺人犯”が逮捕されるまで