黒沢清監督の『SCHOOL DAYS』と出会う

犬童 高校になったら映画を撮ると決めていたので、参考に大学生の作る映画を見て歩いてたんです。『ぴあ』の自主上映欄を見て。高校だと文化祭でチャラけた映画とかやってるじゃないですか。高校の文化祭で8ミリをよく上映してるんですけど、大概くだらないんですよ。逆回転で撮って口から食べたものを延々と出すとかね。

「ぴあ」の自主映画欄 撮影 藍河兼一

――僕も同じようなことをやってました(笑)。

犬童 大学生の映画もほとんど幻滅するんです。その頃流行っていたのは刑事もので、サングラスしてモデルガンを撃ち合う映画とかね。僕が一番嫌だったのは、いい感じの映像を撮って荒井由実をかけてるやつ。そんなのばっかりで嫌になっていた時に、黒沢清さんの『SCHOOL DAYS』を見たんです。これ、その後の見直した時の上映会のパンフレットだけど。

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――これ、貴重品ですね。

犬童 全然他の映画と違って黒沢さんの映画だけムチャクチャかっこいいんですよ。他はみんなプロの真似してるじゃないですか。でも黒沢さんは8ミリだからできる独自の映画を作っている感じがしたんです。一番違っていたのは、登場人物を突き放していること。大学生の映画って、みんななれ合いになってるんですよ。黒沢さんの映画も同級生が出てると思うんですけど、出てる人間を突き放して撮ってるんですよね。他人事みたいに。

 
立教大学「パロディアス・ユニティ」上映会のパンフレット 撮影 藍河兼一

――僕も学生時代に見たんですけど、物語を語るというよりは、解体した感じですかね。

犬童 そうそう。それが突き放してると感じた。僕はその頃まだゴダールとかを見てないから。結局は友達が出ているからなれ合いなんですけど、その出演者に対する距離感を作るというんですかね。ちゃんとした演技はしてないけど、してないのをこっち側からなれ合っていくのか、してないのを平然と撮っているのかって、すごく違っていると思うんです。

撮影 藍河兼一

注釈
1)パン カメラの位置は変えずに左右、もしくは上下に振る撮影技法。

<聞き手>こなか・かずや 1963年三重県生まれ。映画監督。小学生の頃から8ミリカメラを廻し始め、数多くの自主映画を撮る。成蹊高校映画研究部、立教大学SPPなどでの自主映画製作を経て、1986年『星空のむこうの国』で商業映画デビュー。1997年、『ウルトラマンゼアス2 超人大戦・光と影』でウルトラシリーズ初監督。以降、監督・特技監督として映画・テレビシリーズ両方でウルトラシリーズに深く関わる。特撮、アニメーション、ドキュメンタリー、TVドラマ、劇映画で幅広く活動中。主な監督作品に、『四月怪談』(1988)、『なぞの転校生』(1998)、『ULTRAMAN』(2004)、『東京少女』(2008)、『VAMP』 (2019)、『SINGLE8』 (2022)、『劇場版シルバニアファミリー フレアからのおくりもの』(2023)など。