木村拓哉に対するよくある批評として、「彼はいつ見ても、どんな役をしていても、木村拓哉だ。変わり映えしない」というのがありますが、それってスゴいことだし、それでいいんだと思います。いつも本人らしくいることを求められるなんて、俳優でいえば田村正和さんや高倉健さんのような、選ばれしごくわずかな人しかいません。木村拓哉は堂々とそこを登り詰めればいい。
実際、木村拓哉が演じ切ることによって、これまでにたくさんいい作品が生まれました。『マスカレード・ホテル』の刑事役や『グランメゾン東京』のシェフ役は、主演が木村拓哉であることを存分に利用して成功した例です。
ことし放送されたドラマ『Believe』も、新境地を見せながらも「らしさ」をしっかり出していました。彼ももう50歳を過ぎたわけですし、木村拓哉であることをもっと全開にしていってほしい。木村拓哉を起用してドラマや番組をつくる側は、恐れることなく、いつも変わらぬ木村拓哉を描き出していってほしいですね。
名物マネージャー飯島三智の功績
たゆまぬセンス磨きと自己プロデュース力が、スター・木村拓哉をかたちづくってきたと言いました。
もうひとつ、重要なファクターがあります。ブレーンとして木村拓哉の周りにいる大人たちが超優秀だったことです。とりわけ影響力が大きかったのは、マネージャーの飯島三智さんだと思います。
飯島さんのスゴさはまず、器が大きいところ。
ラジオ番組で木村拓哉に「大ガンシャ祭」と叫ばせて、飯島さんから大目玉を食った話は先ほどしました。自分のところのタレントにそんなことを言わせた放送作家なんて、即刻クビにしたっておかしくないのに、飯島さんはそうしない。代わりに、
「おもしろいのはわかるよ、でもこれはやっちゃダメなラインだ」
と厳しく諭す。「おもしろいのはわかる」と認めてくれるところがポイントです。
ガツンと怒られるだけではただ臆病になって、次から萎縮してしまうかもしれない。けれど、怒られつつも「おもしろい」と言ってもらえると、臆せず次はもっとおもしろいことやってやろう、となる。飯島さんは人を伸ばす達人です。