もしあなたが20代なら、この映画は絶対に観てほしい。あるいはこれから20代になる人も、かつて20代だった人も。9月6日(金)に公開される『ナミビアの砂漠』は、2020年代の日本の街で生きる若者の生活や人間関係を、そのままスクリーンに映し出したような作品だ。

 21歳。仕事は脱毛サロンのスタッフ。趣味は特にナシ。将来の夢も特にナシ。彼氏はとりあえずいて、泊まれる部屋がほかにもある。いつも一緒なのはケータイとタバコ(紙ときどき電子)。そんな主人公カナを、俳優・河合優実が自然に演じている。

 そして、脚本と監督を務めたのは、19歳のときに初めて手掛けた『あみこ』(2017年)がベルリン国際映画祭をはじめ各国の映画祭で評判となり、一躍その名を知らしめた山中瑶子。本格的な長編第一作となった本作も、今年のカンヌ国際映画祭で独立賞の一つである国際映画批評家連盟賞を受賞しており、「若き才能が爆発した傑作」と絶賛されている。

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山中瑶子監督 ©2024『ナミビアの砂漠』製作委員会 配給:ハピネットファントム・スタジオ

現代を生きる “普通の女の子” カナの成長の物語

――河合さん演じるカナは、流されて生きているわけではないけれど、なにもかもに退屈していて、目先のことや、近しい人との間で起きることに煩わされてばかり。一見、無為な生活を送っているように見えるかもしれませんが、山中監督はカナをどのような人物として考えられていましたか。

山中 映画を観てくださった人のなかには、「破天荒だね」「変わった子」と言う人もいれば、逆に「友達にいる!」「私、10年前こうだった」なんて言う人もいました。私にとっては、やっぱり普通の女の子。彼女の状態はとっても普通なんじゃないかなと思っています。

 20歳前後というのは、急に社会に放り出されるタイミングで、そこで自分を慣らさなきゃいけない時期ですよね。情報量も選択肢も、決めなくちゃいけないこともいっぱいあって、そういうときって自分が本当にどう思っているのか、敏感に感じ取るのが難しい。次々と起こることの対処に追われて、なんかモヤモヤしているなとはわかるんだけど、いちいち考えていると疲れちゃうしって。そういう状態は誰にでもあることだし、すごく普遍的だなって思っていました。