1ページ目から読む
4/4ページ目

 また、私が三郎丸蒸留所に戻ってきたのもちょうど2015年のことです。蒸留所復興のため2016年9月から開始したクラウドファンディングにおいても「北陸初の見学可能な蒸留所をつくり富山のクラフトウイスキーを世界に愛されるウイスキーへ!」という目標を掲げています。当時ではすでにクラフトウイスキーという言葉が日本の生産者の間で一般的になっていたことが思い出されます。

クラフトウイスキーとは何か

 では「クラフトウイスキー」は、従来の「地ウイスキー」を言い換えたものにすぎないのでしょうか? 私は「地ウイスキー」と「クラフトウイスキー」は明確に違うものだと考えています。その違いは理念の有無です。つまり、「どんなウイスキーを造りたいかが明確に意識」できていて、「その実現に向かって有形無形いずれかの形で努力を続けている」かどうかが、かつての地ウイスキーからの脱却のポイントになっていると思うからです。

 地ウイスキーはブームに乗る形で、ただ売るために、ウイスキーであればなんでも良しとされ造られていたように感じます。そこに理念はなく、仕込みも漫然と行われていたのです。それらとは違い、ここでいうクラフトウイスキー蒸留所は、まず「どんなウイスキーを作りたいか」を明確にします。そのうえで、一時のブームとしてではなく、文化として根付かせるためにたゆまぬ努力を続けていかなければなりません。

ADVERTISEMENT

©shima_kyoheyイメージマート

日本でウイスキー発展していくためには?

 最近ではクラフトウイスキーを標榜しながら、地ウイスキーのような造り方をしているウイスキー蒸留所が増えてきていることも事実です。地ウイスキーの二の舞にならないように、品質を担保しつつ多様性をもちながら発展していくためには、蒸留所同士の技術交流やウイスキーファンの開拓に向けた連携が必要です。

 クラフトウイスキー蒸留所のなかには、本坊酒造やベンチャーウイスキーをはじめ、世界的な販路をもち、製造規模も大きな「メガクラフト」に成長したメーカーも現れています。しかし、スコッチ産業に比べると、日本のウイスキーは規模、歴史ともにまだまだ遠く及びません。

 サントリー、ニッカ、キリンなどの大手メーカー、そしてメガクラフト、クラフトウイスキー蒸留所たちが連携し、ジャパニーズウイスキーのブランド化を図っていくことが、日本のウイスキーが次の100年を迎えるために必要ではないでしょうか。