山本氏は名物広報だけあって、静岡県では鉄道ファン以外にも知名度が高い。テレビ番組にも多く出演し、現在もNHK「ラジオ深夜便」で東海地域のリポーターを務めている。2017年には、ユニクロの静岡編のCMにもSLと並んで出演したことがある。

  ツアー参加者も鉄道好きだけではなく、山本さん目当てのお客さんもいるという。そうなると、バス移動時間に山本さんのトークが聞きたいが……。

「そこは、あんまりやらないです(笑)。過去3回の経験で、やっぱり鉄道がお好きな方が参加するんです。鉄道に乗ってる瞬間が1番幸せで、逆に言うとバスのところは休憩時間という方が多い。睡眠にあてたり、ぼーっとしたり。それにソフトな鉄道ファンも多いので、僕が一方的に鉄道の話を喋るのは良くないなって。

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  でも係員としてバスの前の席には乗っているので、詳しい話を希望される方は隣の席でお話ししたりもしますよ」

長良川鉄道はこのツアーのために臨時便を運行する(大井川鐵道提供)

「もちろん大井川鐡道を応援してほしい気持ちもありますが…」

  大井川鐵道の本線は2022年9月の台風で被災し、現在も川根温泉笹間渡駅~千頭駅間は不通のままだ。これまでも土砂災害になっては修復の繰り返しだった。つまり大井川鐵道は本当は「応援されたい側」である。しかし応援鉄ツアーは「他社の鉄道」にも乗って応援する。

「ウチも含めて各社さん大変だと思うんです。そもそも乗る人が減っているという要因が1番大きいでしょうし。災害のリスクがある土地の路線も多いです。それをなんとか維持してほしいっていう気持ちが応援鉄ツアーのスタートです。もちろん大井川鐡道を応援してほしい気持ちもありますが、行った先の路線を応援したいのも本心ですね」

高岡市の路面電車、万葉線はドラえもんラッピング車両が人気(筆者撮影)

  そんな山本氏には、ちょっとだけ期待がある。

「これは理想なんですけども、行った先の鉄道事業者にも旅行部門を持ってるところがあるんです。そういうところがツアーを組んで大井川鐡道に来てくれるとか、そういう可能性だってあると思うんです。相互送客っていうんでしょうか、応援鉄で関係を深めて、こういう可能性も探っていきたいなって」