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さらに被害者たちは「死」について語っていたといい、「死にたい」というより「消えたい」に近い感情を長時間持ち続けるとしている。

私が以前取材させてもらった性暴力の被害にあった女性も、同じような経過をたどっていた。女性は幼少の頃に義父から暴行され、中学生の時には先輩たちから集団で暴行を受けたが、その後性風俗の仕事を始めた。経済的理由もあったというが、性風俗の仕事を選んだ理由を「男性に仕返しをしたいという思いがあったから」と語った。被害を受けたことによって主体性が侵害された経験から、彼女にとって、それを克服する心理的プロセスとして、あえて自分の意思で性風俗の世界に飛びこむ必要があったということなのかもしれない。

性被害を家族から責められ、二重に尊厳を傷つけられた

レイプがきっかけでパンパンになったという女性たちの証言からは、性被害を受けたことを家族に明かしても女性に落ち度があったように捉えられ、怒られたり不仲になったりして家に居づらくなってしまったことがわかる。レイプを受けたうえ、周囲からとがめられた女性たちは、二重の意味で尊厳を深く傷つけられたに違いない。

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前述の心理分析を踏まえれば、「自分には価値がない」と思い詰めて自尊心が低下し、自暴自棄になった末に居場所がなくなり、結果として自身では望んでいなかった娼婦へと転身することは充分ありえるだろうと考える。彼女たちは自分たちの心理状況や娼婦になった理由を詳しく説明していないが、たとえば「やけくそ」という短い言葉にも、心の奥底に深い苦しみが込められていることに思いを巡らせる必要があるだろう。

『街娼』では約200人の面会調査から、経済的な理由から街娼になった女性が多いと指摘しているが、手記や証言を残した89人のなかでも、「家族を養うため」「生活のため」といった経済的理由と読み取れる事情を挙げる人は少なくとも35人と約4割いた。お金が必要になった事情として目につくのは、父母など家族を亡くしたことで、89人中27人が該当し、うち少なくとも10人が戦死や戦災死が原因だった。