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社長から贈られた「最後の言葉」にあぜん

 岸本さんは「退職届を出してからの2カ月間は地獄だった」と振り返る。辞める気まずさだけでなく、社長からの“当たり”が強くなったのだ。

「私が取ってきた仕事も、社長がひとりで勝手に契約に行ってしまったり、『クライアントに退職の挨拶はするな』と釘を刺されました。でも、お世話になった人に挨拶しないのは失礼だと思い、社長にバレないようにショートメッセージでご報告しました」

 また、2週間後に会社を去るにもかかわらず、普段の営業ノルマに加えて「飛び込みで40件のアポイントを取る」という特別ノルマも課されたという。

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写真はイメージ ©Trickster/イメージマート

「達成できないのも嫌なのでやりきりました。出社最終日にはランチに誘われて、これも円満退職のための苦行と思い、一緒に行ったんです。そこでも『新しいことには向いていない』という私の人格否定にはじまり、『銀行員の男はおもしろみがない』と、彼氏の悪口まで言いはじめる始末。最後の最後まで不愉快な気持ちにさせられました」

 岸本さんが現在働いている会社で、前の職場の話をすると「よく5年も働いたね」と驚かれるという。

「転職活動よりも、会社を辞めるほうが大変でしたが『跡を濁さず円満退職する』という目標が達成できて満足しています。ただ、私がプロポーズと転居を理由に辞めてしまったので、今もその職場で働いている人は『退職理由のレパートリーがひとつ減ってしまった』と頭を抱えています(笑)」