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「社長から5時間におよぶ説教を受けたこともあります。社長の口癖は『俺の時給は10万円』だったので、心の中で『今50万円損してるってことか~』と思いながら説教を受けていました」

 会社の労働環境も決して良好とはいえない状態だったという。

「休日出勤、残業も当たり前で、定時に帰る人はほぼ0。有給も取りにくい社風でした。それでも、お給料はそこそこもらっていたし、クライアントさんとも良好な関係を築いていたので、やりがいは感じていたんです。ただ、数少ない同期も1年のうちに退職し、私よりもあとに入社した中途採用の社員も数カ月で辞めていくので『ヤバい会社で働いているのかも』と、不安を抱くようになりました」

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写真はイメージ ©maruco/イメージマート

 ワンマン社長が旗を振る同社は、毎年新卒社員を採用しても定着せず、中途採用で入社してくるのも年上ばかりだった。そのため彼女は、入社して5年が経っても“新人の仕事”として給湯室の掃除やゴミ箱の清掃を割り当てられ続けていたという。

 そんななか、岸本さんに転職を決意させる出来事が起きる。

服装が気に食わないという理由で社長に呼び出され...

「長く任されていたクライアントの担当を、理由も分からぬまま外されたんです。その日も社長から服装が気に食わないという理由で呼び出され、5時間以上のお説教を受けているといきなり、『A社の担当から外す!』と告げられて……。取引先の方は『岸本さんは実績も残しているから、担当を続けてほしい』と言ってくれましたが、結局降りることになりました」

 そうして退職を決めた岸本さんが転職活動と並行して行ったのが、会社を辞めるまでの“シナリオ作り”だ。

「これまで何人もの社員を見送ってきましたが、円満に辞めた人はひとりもいませんでした。すぐにでも辞めたい気持ちはありましたが、有給も取りたいし絶対に良い形で退職したかった。だからこそ、入念に計画を立てる必要があったんです」