静岡から愛知を経て岐阜県に入るまで、山間部ながら2車線を維持しており、特に変わった印象はない。そのまま下呂市内で馬瀬川に沿って走っていると……センターラインが消えた。さらに“大型車通行不能”の看板が現れ、少しワクワクしてくる。
国道なのに対向車とすれ違えないような道路になると、胸が躍ってしまうのは、私だけだろうか。
国道といえば日本で最上級の道路であり、整備が行き届いた立派な道路をイメージする人が多いだろう。しかし、そのイメージとは裏腹に、道幅が狭く、舗装は剥がれ、路面には無数の落石が転がっているような国道も存在している。私はそのギャップに惹かれ、過酷な状態の国道を求めて全国を巡っている。そして、そのような国道のことを、親しみを込めて“酷道”と呼んでいる。
酷道化した国道257号
国道257号が酷道化したところで、前方に見えてきたのがトンネルだ。幅員が狭く、車1台分の幅しかない。坑口もレンガや石積みで固められておらず、掘ったままの歪な形で、表面にコンクリートが吹き付けられているだけだ。
しかし、心躍る酷道区間はあっという間に終わってしまい、センターラインが復活する。
道の駅パスカル清見付近で国道472号と合流し、2つの国道の重複区間となる。この先は“せせらぎ街道”と呼ばれる区間だ。正式には“飛騨美濃せせらぎ街道”といい、岐阜県内の郡上八幡と高山市清見町の64キロ間の道路を指す。
複数の国道及び県道により構成され、四季折々の風景が楽しめる。全線2車線で走りやすいことや、2010年に通行料金が無料化されたこともあり、人気のドライブコースになっている。東海地区の方なら、ご存知の人も多いだろう。
そんな、せせらぎ街道を走っていると、国道257、472号の重複区間にもかかわらず、突然、県道73号に変わってしまう。
道路脇には、国道であることを示す逆三角形の国道標識が立っているが、そのすぐ先には六角形の県道標識が見えているのだ。
この道は国道なのか県道なのか……とても不思議な光景だ。
謎を解明するヒントは、国道標識のすぐ後ろにある。